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噛み合わせは大切

噛み合わせは大切

 最近、ラーメンやうどん、そば屋などで、すすることができない子どもたちを目にすることが多い。
 食事マナーの問題からか、昔のようにソバなどのすする音を立てて食べることが、若い人の間では少なくなってきた気がする。事実、子どもたちに音を立てずに食べるよう注意する保護者の姿もよく見かける。

 私も自分の子どもたちに尋ねてみた。すると「すすることが難しい」、次に「おなかに空気がたまり気持ち悪い」という返事だった。
うまくすすることができない原因として、次のことが挙げられる。
①口腔機能の低下により▽上手に噛む(咀嚼)▽飲み込む(嚥下)▽発音―ができない。
②児童では、顎の発育が悪く正常な顎口腔機能の発達が得られない。
③歯並びが影響する。
このようなことから、永久歯列が完成する時期まで咀嚼、嚥下、発音といった正しい「咀嚼運動」を学習することが大切だ。
噛むことは唾液の分泌や脳への血液を促し、歯並び(歯列)の正常な発達や顎の成長を促進する働きがある。
生涯にわたり自分の歯で噛むためにも正しい「噛み方」を身につけよう。

義歯性口内炎予防のための義歯清掃法と洗浄剤の選び方

高齢者の中には入れ歯を使用している人が多く、入れ歯が影響する口内炎も最近の診療で多く見受けられるようになった。この原因は大きく分けて①微生物因子による口内炎②機械的刺激による口内炎③アレルギーによる口内炎―に分けられる。
その中でもホームケアが重要な微生物因子による口内炎について説明する。微生物が口内炎を引き起こすメカニズムは、入れ歯表面に付着した微生物が粘膜の破壊を起こし、微生物に対する遅延過敏反応などによって病的反応を引き起こしていると考えられる。
治療法としては入れ歯に付着した汚れの除去が重要。機械的清掃にはブラシと超音波による清掃があるが、磨耗に対する配慮が必要だ。一般に歯ブラシは、毛が太い物は磨耗を引き起こしやすい。また毛が長く先が丸く径の小さいものは磨耗しにくい。歯磨き剤、家庭用洗剤、研磨用せっけんは入れ歯を傷つけるだけでなく、入れ歯の適合性を変化させることから使用すべきではない。また入れ歯をいろいろな方向にブラッシングする方がより効果的で、毎食後と就寝前に行うとよい。ただしブラシだけでの清掃ではプラーク除去は不完全だ。また超音波洗浄器としていくつか市販されているが、これのみでは十分ではないので化学的洗浄法を併用するようにする。
これは入れ歯洗浄剤を使用する方法で①アルカリ性過酸化物②次亜塩素酸塩③酸④酵素―の4種類の洗浄剤が主に市販されている。
アルカリ性過酸化物は最も一般的な浸漬型の洗浄剤で、使用が簡便で香りがよく入れ歯に有害な影響を与えない。義歯を1日6~8時間洗浄剤に浸しておくことは軽い汚れには効果的だ。主に新しい義歯を装着した人や毎日清掃する人に対して有効で、入れ歯の著しい汚れや付着した歯石の除去には効果がない。
次亜塩素酸塩は次亜塩素酸溶液が入れ歯に付着したプラークの除去に有効であることから、週に1回6~8時間義歯を浸漬する方法を用いる。大量の汚れや歯石の付着しやすい人に対して勧められる。
酸は着色性の汚れや歯石の除去に非常に効果があるが、金属を腐食させるという欠点がある。
酵素を用いた義歯洗浄剤は強固な付着物を除去するには効果があったと報告がある。酵素洗浄剤は、通常の使用では殺菌作用やカビを防ぐ作用があり、毒性がなく義歯材料に為害性(害を及ぼすこと)が小さい。それぞれの利点、欠点を理解して使い分ける必要がある。

先天性欠如

先天性欠如

生まれつき歯が足らないことを歯の「先天性欠如」と言う。
日本小児歯科学会の最近の調査では、上下おやしらず合わせて永久歯が28本(親不知を除く)そろわない「先天性欠如」が、小児歯科を受診する子どもの1割に上ることが分かった。
この調査には7大学の小児歯科と協力歯科医が参加協力し、1980年代以降に12都道府県で7歳以上の受診患者1万5,544人のX線画像を分析した結果、1,568人(10.09% )に1本以上の永久歯
の欠如が認められた。
先天性欠如歯の割合は、左右5番目に生える奥歯(第2小臼歯)と2番目の前歯(側切歯)が多く、上あご(4.37% )より下あご(7.58% )の方が多かった。先天性欠如は病気ではなく歯の形成異常の1つで、乳歯にも見られる。
原因はよく分かっていないが、永久歯の先天性欠如が1~2本の場合は、進化の過程での退化現象とみられている。このほか遺伝的要因や内分泌疾患などの関与も考えられるが、明確な原因が分からないため予防することはできない。
治療法は次の通り。
①乳歯をそのまま使う。大事に使えば30歳ぐらいまで使えるといわれている。
②矯正治療をする。歯と歯の隙間を詰めて歯を並べる。
③入れ歯を入れる。
④ブリッジを入れる。ただしブリッジを入
れるには、土台にする健康な歯を削らなけれ
ばならない。
⑤インプラントを入れる。発育期には不可なため、大人になってから治療に取りかかる。
また治療ではないが、顎の大きさに比べて歯が大きく見た目に異常が感じられない場合や、4本生えるはずのところに3本分のスペースしかなく、かえってそれなりの歯並びとなることがある。両方ともまれなケースなのでそれを期待して放置することは避けるべきだ。
お子さんの歯が先天性欠如だと聞かされた場合、親は大変なショックを受けて大きな心配事となってしまう。また歯科医もいずれの治療法を選択すべきか、非常に難しいものとなっている。
お子さんの歯に異常を感じた場合は、早めにかかりつけ歯科医に相談してほしい。

スポーツマウスガードの奨め

皆さんは、日ごろどんなスポーツを楽しんでいるだろうか。スポーツ中に歯・口腔・顎関節などの外傷事故にあった経験はないだろうか。外傷によって顎顔面や口腔に後遺症をもたらすと、肉体的・精神的にもダメージを受け、社会生活にも支障を来すことになる。
特に頭頸部への衝撃で起こる脳震とうは、選手生命に影響を与えることにもなりかねない。学校歯科保健では、低年齢層での顎顔面や口腔への外傷が大きな問題となっている。
スポーツ外傷をいかに防ぐかが重要で、どんなスポーツも安全でこそ健康なスポーツといえる。そこでスポーツ歯科医学の立場から、顎顔面口腔の領域をスポーツ外傷から保護するために「マウスガード=口腔内保護装置」の着用を推奨している。
スポーツと歯科の関係は19世紀初頭のイギリス、ボクシング選手のマウスピース装着から始まった。その当時の選手はマウスピースを装着せずに競技を行っていたが、口腔外傷、脳・頸椎への障害などで、最悪の場合は死亡することもあった。そこで選手らは歯科医師にゴム製の口腔内装置を作製してもらうことにした。その後、アメリカを中心にマウスガードとしてボクシング以外のコンタクト
スポーツにも応用されるようになった。
マウスガードはマウスピース、マウスプロテクターとも呼ばれ、顎口腔外傷の予防・軽減を目的に、競技スポーツ時などに使用するものだ。上顎歯列を覆う形が一般的だが、場合によっては下顎だけ、上下顎に装着する物もある。
マウスガードの使用効果としては、①外傷や脳震とうの予防と軽減②運動能力の向上―に大きく分けられる。マウスガードを装着することで、外傷の発生頻度や重症度が低下することが多く報告されている。
外国では、マウスガードを装着していないと、装着しているときの1.6から1.9倍の確立で外傷を受ける可能性が高くなるとした報告もある。完全に歯が脱臼※1するような場合でも、装着することによって亜脱臼※2にとどめることも可能となる。
ただボクシングのような対戦相手の顔面を直接殴打するような格闘技にはマウスガードの装着が義
務付けられているが、装着により直接打撃に対し▽脳震とうを防ぐ▽脳震とうを起こしても重症化にならない―については、科学的根拠が明確にされていない。また装着によって運動能力が向上されることについても、同様に確立されてはいない。しかしコンタクトスポーツでは、マウスガードを装着することで安心してプレーができるようになり、本来持つ力が発揮できるようになると認識し、試合だけではなく練習中から装着することをお薦めしたい。
▽広報注※1=外力によって、歯を骨(歯槽骨)に固定している組織(歯根膜)が断裂すること。
▽広報注※2=一部歯根膜の付着が残存している状態のこと

歯並びはいつごろ治すのがいい?

歯並びはいつごろ治すのがいい?

幼稚園、小学校などで講演すると、必ず「歯並びはいつごろ治すのがいいでしょうか」という答えに一番困る質問が出ます。なぜならば一人一人の歯と顎の骨の状態によって答えが違ってくるからです。それでは答えは「専門医によく相談してください」となって、講演会も終わってしまうので、一般的に治した方がよい歯並びの内容を次のように説明します。
大きく歯並びを分類すると次の3つに分類されます。
①反対咬合=一般的に「受け口」といわれています。下の歯が前方に出すぎている状態です。
②上顎前突=一般的に「出っ歯」といわれています。上の歯が前方に出すぎている状態です。
③叢生=一般的に「乱杭歯」といわれています。歯の一本一本がそろわずに前後にずれたりねじれたりしています。
それではお子さんの口の中をじっくりと見てください。
①の反対咬合の場合、あなたの家族は黄色人種ですか。ほとんどの日本人が含まれると思いますが黄色人種の場合、全部が永久歯に生え変わるまで待つと矯正だけでは治りにくく下顎骨の手術が必要となる子どもの割合が多くなります。中顔面の骨の発育が少ない特徴のためです。そのため早く(5~7歳ごろ)治療するのがよいことが多いのです。3歳から治療できる装置もあります。でも反対咬合と一口に言っても特徴がいろいろあります。お子さんがいつ治療に入るべきかは専門医に相談するのがよいでしょう。
②の上顎前突の場合、上下の顎の骨の大きさと位置によって異なってきます。永久歯に全部生え変わってからでも治療できる人の割合が黄色人種の場合は多いのです。白色人種の場合は治りにくい人の割合が増えますので、早い時期に一度相談するのがよいと思います。
③の叢生の場合、6歳臼歯の噛み合わせが肝要となります。この歯が上下左右とも正しく噛んでいる場合は永久歯に生え変わるまで待ってもよい割合が多くなります。
実際の歯並びは①と③、②と③の両方の問題が重なっていることも多く、より複雑な診断が必要となる場合が多いです。いよいよ診断が決まり治療に入ったとしましょう。治療の期間は非常に長くなります。
早くても2~3年はかかります。長い場合は途中に経過観察する期間も含めて10年以上になる場合もあります。顎の発育を促したり歯を動かしたりする期間が終了しても、後戻りを防ぐために保定する期間も長いものになります。自分で判断して勝手に中止するとそれまでの努力が無駄になりますので、治療を始めたら最後まで続けることが大切です。