お知らせ
オンライン資格確認説明会のアーカイブ
内 容:令和4年8月24日(水)に開催された説明会です。
〇オンライン資格確認の趣旨について(安心・安全で質の高い医療を提供していく医療DXの基盤)
〇8月10日の中医協で答申・公表された内容について
・原則義務化の内容について
・医療機関・薬局向け補助金の拡充について
・診療報酬上の加算の取扱いの見直しについて
〇具体的な申し込み手続きなど
〇顔認証付きカードリーダーのデモ
〇質疑応答
開催者:日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会、厚生労働省、社会保障診療報酬支払基金
岐阜県歯科医師会の新CMが6月1日から岐阜放送で流れます ♪
歯科保健診療車けんし8020披露式を開催
歯科保健診療車「けんし8020」の老朽化に伴い、この度県の補助をいただき6代目として、新型コロナウイルス感染症のまん延防止対策や災害地での歯科診療も対応可能な車両として誕生しました。
4月18日(よい歯の日)の午前中には、稲葉神社(岐阜市)でお祓いを済ませ、午後1時から県歯会館で披露式を行いました。式の中ほどから暴風雨となり、雨の中でのテープカットとなりましたが、お蔭様で無事終了することができました。
現在は、5代目の旧車両を運用しておりますが、最後の整備をして、5月ごろから正式運用が開始されます。
【歯科保健診療車「けんし8020」とは】
県の委託により県内の障がい児(者)施設などを訪問して、歯科健診や予防処置を行っており、バスという機動性を利用して5代目の診療車は、東日本大震災に災害支援を行うなど歴代の車両は災害支援にも活躍しております。
歯みがきと口腔ケアでウイルス感染症に備えましょう
SKE48の歯科衛生士の体験がGYAO!で配信開始
6月5日(水)18時15分からのぎふチャン「Station!」の番組内の「SKEの岐阜県だって地元です!」のコーナーでSKE48のメンバー3人(北野瑠華さん、井田玲音名さん、高畑結希さん)に歯科衛生士体験をしていただきました。その放送内容が、動画配信サイト「GYAO!」でも視聴可能になりました。ぜひ、ご覧下さい。
【動画はこちらから】
平日(木・金)の障がい者への歯科診療をスタート!
7月5日(金)午後1時から岐阜県口腔保健センター障害者歯科診療所が、平日の診療を木曜日(午前)と金曜日(午後)に限定して開始しました(土日もこれまで通り診療)。
これまで障がい者専用の同診療所の診療は、土日のみの受け入れ体制だったのですが、朝日大学医科歯科医療センターで約20年障がい者歯科医療に携わってこられた橋本岳英歯科医師を同診療所に常勤で迎えたことによって可能になりました。
岐阜県口腔保健センター障害者歯科診療所の診療時間
※木・金・土日ともに、9:00~9:30および16:30~17:00は、急患のみの対応となります。
岐阜県民の歯・口腔の健康づくり条例の改正案が議決
岐阜県民の歯・口腔の健康づくり条例の改正案が議決
全国的にも初の「歯科衛生士の確保・養成及び資質の向上」などの文言が入った同条例の改正案が、6月27日(木)に開催された岐阜県議会定例会(令和元年第3回)で可決されました。
平成22年4月に同条例が初めて制定され、2年連続で骨太の方針に歯科の重要性が明記される中、国の動きに対応すべく改正がなされました。
△岐阜県民の歯・口腔の健康づくり条例の一部を改正する条例案
※岐阜県議会のホームページ
https://www.pref.gifu.lg.jp/gikai/teireikai/heisei31/dai3/giinhatsuan01-3/kengi11.html
噛み癖ありますか?
皆さんの利き手は右・左どちらでしょうか?利き足(軸足かもしれませんが)は?靴を履く時、風呂に入る時など、決まった足から入りませんか?それはあって当然ですが、食事の時はどうでしょうか?右側・左側のどちらかが噛みやすい、噛みにくいのであれば、それはちょっと要注意です。
本来、肉食動物はどの方向からでも獲物を捕らえなければいけません。片側からしか捕れないようでは獲物を得る確率が半分になってしまいます。草食動物も片噛みをしていては片側の歯ばかりすり減ってしまい、噛めなくなってしまいます。なのでどちらの動物も両側を均等に使っています。
しかし、人間という動物はどうもそうではないようです。患者さんに聞くと、多くの人が噛み癖を持っています。噛み癖が原因でトラブルになっている人もいるかもしれません。
噛み癖があると、得意な側の歯に過度な負担がかかるという大きな問題があります。2人で持つ荷物を1人で持ち続けるには限界があります。いずれ持てなくなってしまいます。歯も同じです。得意な側で噛めなくなった時、反対側で噛もうとしても、もともと不得意になった原因があるわけなので、なかなかうまく噛めません。そうならないためにも、早めに噛みにくい側をつくらないように処置をすることが大切です。
特に、学童期の子どもは乳歯の生え変わりの時期にぐらぐらの歯を使わずにいて、そのまま片噛みの癖がついてしまったり、食事の時に横を向いてテレビを見る事により、自然に片噛みになってしまいます。
子どものうちから片側ばかりで噛んでいると、顔の形が左右非対称に発達してしまいます。左右対称の方が人に与える印象が良いそうです。それを放置すると、体までゆがんでいくという説もあります。四十肩、五十肩は片噛みによる体のゆがみが原因と言う整体の先生もいます。
人間の体は完全に左右対称とは言えませんが、片側に負担をかけすぎることは体にとって良いことではありません。「予防に勝る治療はなし!」左右均等に使えるように気をつけてください。
歯とジュースの関係
あなたの歯磨き方法正しいですか?
先日、患者さんに「先生、毎日3回歯磨きしているのに、どうして歯周病になるのでしょうかねぇ?」と言われ、少々厳しい言い方ですが、「磨いているのと、磨けているのは違いますよ。正しい歯磨きの方法を習って帰ってくださいね」と答えました。
歯科疾患実態調査によると、95%以上の人が毎日歯を磨く習慣があると答えています。一方で、40歳以上の80% 以上の人が歯周病にかかっているという結果もあります。つまり、歯磨きはしていても磨けていない患者さんがたくさんいることになります(歯周病の程度も人によって違うので、まったく磨けていないわけではないですが)。 「では、歯磨きではなく、他の方法(例えば、うがい薬や歯磨き粉など)で歯周病が治らないですか?」と聞かれることもあります。残念ながら、歯に付着する汚れ(歯垢、プラーク)はバイオフィルムと呼ばれ、細菌が何層にも重なってできているため、薬剤の効果はほとんど期待できません。歯科医師としても、何か画期的な薬やもっと簡便な方法があれば、介護の必要な方などは非常に助かるのに-と思うのですが、ブラシで物理的にバイオフィルムを壊すこと以上に良い方法がないのが現状です。
治療室で歯科衛生士が歯磨き指導をしていると、「この年になって歯磨きを習うなんて恥ずかしいわ」、「この間も習ったのに磨けていないなんて情けない」という患者さんの声を聞くこともあります。ですが、人によって口の中の状況は歯並びも、歯周病の程度も違うので、その人に応じた歯磨き方法を習う機会はなかなかありませんし、すべての歯をしっかり磨くことは大変難しいことなのです。
歯周病の治療の大前提に原因除去療法という考え方があります。簡単に言えば「病気の原因を取り除くことで歯周病を治す」という考え方です。歯周病は歯の表面についた汚れ(歯垢)が、歯茎に腫れ(炎症)を起こすことで始まります。したがって、歯磨きによって汚れを落とすことは、歯茎の炎症を抑える治療そのものとも言えるのです。
歯周病は生活習慣病の一つとされています。自分自身に必要な歯磨きの方法をチェックし
て、それを継続することで口の健康だけでなく、全身の健康にもつながります。歯磨きをしているのに血が出たり、歯茎が腫れたりすると感じている方は、一度歯科を受診し、正しい歯磨きの方法を習うといいかもしれません。実際に「歯磨き方法を変えるだけで歯周病が改善した」と実感する患者さんも大勢います。
くすりと歯科治療
なぜ、歯科治療と「抗血小板剤」は密接な関係があるのでしょうか?それは歯科治療において、量に違いはありますが、出血を伴う処置が多くみられるからです。例を挙げると、抜歯、口腔内の外科手術などがあります。
そもそも「抗血小板剤」の役目とは何でしょうか?「抗血小板剤」は血小板の働きを抑える薬です。血小板とは、出血時に傷口に集まって塊(血餅)をつくり、血を止める働きをする成分です。ところが、傷口ではなく血液中で塊(血栓)がつくられると、脳や心臓の血そく管を詰まらせ、心筋梗塞や脳梗塞を引き起こす原因となります。
「抗血小板剤」を服用すると、血栓の発生を防ぐことができます。しかし同時に、出血時の血栓による止血も抑えられ、血が止まりにくくなってしまうのです。
むし歯や歯根の治療、歯石取りのような一般的な歯科治療においては、多少の出血があってもほとんど問題にはなりません。では、抜歯のような出血を伴う外科処置では、薬を中止したほうがよいのでしょうか?
いいえ、そうではありません。薬を中止すると、血管が詰まりやすくなり、全身状態を危険にさらす度合が高くなります。従って、現在は休薬をせずに処置を行う場合が多くなっています。もちろんその際は、止血処置を十分に行う必要があります。日本循環器学会の抗凝固・抗血小板療法ガイドラインにおいても、「抜歯時には抗血栓薬の継続が望ましい」と明記されています。
「抗血小板剤」の種類、投与期間、全身状態などを考慮したうえで、処方医師と歯科医師が連携して判断するため、患者様の自己判断での休薬は避けてください。
今回は「抗血小板剤」についてお話ししましたが、歯科治療に影響を及ぼす薬は他にもたくさんあります。また、患者様の全身状態も歯科治療に大きく影響します。歯科医院を受診されるときには、かかっている病気と服用中の薬を必ず伝えてください。そして、処方医の指示の下で治療を受けるようにしましょう。そして何より、歯を削ったり、抜いたりすることがないように、毎日のブラッシングと定期的な健診を受けることを心掛けましょう。
くすりと歯科治療
なぜ、歯科治療と「抗血小板剤」は密接な関係があるのでしょうか?それは歯科治療において、量に違いはありますが、出血を伴う処置が多くみられるからです。例を挙げると、抜歯、口腔内の外科手術などがあります。
そもそも「抗血小板剤」の役目とは何でしょうか?「抗血小板剤」は血小板の働きを抑える薬です。血小板とは、出血時に傷口に集まって塊(血餅)をつくり、血を止める働きをする成分です。ところが、傷口ではなく血液中で塊(血栓)がつくられると、脳や心臓の血そく管を詰まらせ、心筋梗塞や脳梗塞を引き起こす原因となります。
「抗血小板剤」を服用すると、血栓の発生を防ぐことができます。しかし同時に、出血時の血栓による止血も抑えられ、血が止まりにくくなってしまうのです。
むし歯や歯根の治療、歯石取りのような一般的な歯科治療においては、多少の出血があってもほとんど問題にはなりません。では、抜歯のような出血を伴う外科処置では、薬を中止したほうがよいのでしょうか?
いいえ、そうではありません。薬を中止すると、血管が詰まりやすくなり、全身状態を危険にさらす度合が高くなります。従って、現在は休薬をせずに処置を行う場合が多くなっています。もちろんその際は、止血処置を十分に行う必要があります。日本循環器学会の抗凝固・抗血小板療法ガイドラインにおいても、「抜歯時には抗血栓薬の継続が望ましい」と明記されています。
「抗血小板剤」の種類、投与期間、全身状態などを考慮したうえで、処方医師と歯科医師が連携して判断するため、患者様の自己判断での休薬は避けてください。
今回は「抗血小板剤」についてお話ししましたが、歯科治療に影響を及ぼす薬は他にもたくさんあります。また、患者様の全身状態も歯科治療に大きく影響します。歯科医院を受診されるときには、かかっている病気と服用中の薬を必ず伝えてください。そして、処方医の指示の下で治療を受けるようにしましょう。そして何より、歯を削ったり、抜いたりすることがないように、毎日のブラッシングと定期的な健診を受けることを心掛けましょう。
歯の痛み~関連痛~
次の日、痛みが続くと来院され、奥から四番目の治療を納得していただき処置。1週間後、「あれからすぐ楽になったわ。不思議ね。ほんとに一番奥が痛かったのに」とおっしゃった。患者様も僕もホッとひと安心。
関連痛とは痛みの原因となる部位とは違う部位に感じる痛みのことです。痛み刺激が神経を通じて脳に伝わる際、同じまたは隣接する神経束の刺激として誤認するためとされています。
口の周りで起きる関連痛で身近なものとしては、かき氷などを食べた時に咽頭神経が刺激され、こめかみがキーンと痛く感じるもので、「アイスクリーム頭痛」と呼ばれます。歯髄炎(むし歯)で耳やこめかみ、急性上顎洞炎で歯に痛みを感じることもあります。上の歯が原因で下の歯に痛みを感じる、またその逆の場合もあります。重大なものとして、狭心症などでは心臓部の痛みを左上腕から下顎、奥歯の痛みとして感じる場合があります。
関連痛とはやや異なりますが、非定形歯痛(突発性歯痛)と呼ばれるものがあります。「治療、抜歯したのに歯痛がとれない」、「いくら検査しても原因が見つからない」といった原因不明の歯痛です。不明とされるものの原因に関する疑わしい説はあり、これも神経伝達が混乱することによる神経因性説が有力説の一つで、その対処法も考えられています。
治療を受ける場合は、ご自身の感じる痛みの様子をしっかり伝えた上で、じっくり相談して治療方針を決定するのが、痛みから解放される近道ではないでしょうか。
学校でCOと言われて安心していませんか?
新年度が始まり、学校で歯・口の健康診断(健診)が行われる時期です。そろそろ健診結果のお知らせを学校からもらってくるころでしょうか?そのお知らせの中で「むし歯になりそうな歯(CO)があります」にチェックが入っていませんでしたか?
1.CO(シー・オー)とは
COとは削って治療する必要はないですが、このまま放置すると進行する可能性が高いむし歯の状態で要観察歯のことをいいます。しかし、保護者の皆さんは治療する必要がないイコール歯科医院に行かなくて良いと考えて安心してしまいがちで、これが大きな問題だと思います。
学校での健診はあくまでもスクリーニングで確定診断ではありません。そして、COでは進行を防ぐために歯の清掃や甘いものを制限するといった食生活の改善や生活リズムの改善をする必要があり、フッ化物利用などを行うべきであり、そういった元で注意深く観察していかなくてはならないのです。
2.COの下に隠れたむし歯の進行
本当にCO程度のむし歯なのかどうかはやはり歯科医院を受診し、レントゲンなどの特殊器具を使い確定診断してもらう必要があります。毎年の健診でCOと言われ続け安心していたら突然痛みが出現して来院される子どもさんがときどきいます。診療室で診察してみると一見したところではむし歯による穴があいてないように見えてもレントゲンを撮ると中で大きくなっていました。学校健診でCO以外のチェックが全くないのでそれまで何年も歯科医院を受診していなかったことにより見過ごされてしまったと思われます。また、見たところ全くむし歯がないと思ってもレントゲンで歯と歯の間にむし歯がみつけられることもよくあります。
3.歯科医院での定期的な健診を
学校健診で治療が必要な項目にチェックが入っている子はすぐに歯科医院を受診するのは当然ですが、COなどすぐに受診の必要がないと記載されている場合も年に2~3回程度の歯科医院での定期健診をお勧めします。
特に乳歯との生え替わりの時期は重要で、後から生えてくるはずの永久歯がない場合があり、10人に1人いるとも言われています。また、何らかの異常で永久歯が正常に生えてこられないこともあります。診療室でないと見つけられないむし歯以外の異常も見つけることができます。
お口の病気はむし歯だけではありません。COと言われて安心しないで、学校健診では見つけられない歯やお口全体の異常を早期に発見できるだけでなく、お口の健康を維持していくためにも歯科医院での定期的な健診をお勧めします。
骨まで溶かす「根尖(こんせん)性歯周炎」
むし歯を放置していませんか?物をかんだ時痛くありませんか?その痛み、歯根の先がうんでしまう病気、「根尖性歯周炎」かも!
①どんな症状が現れるの?
歯が浮いた感じがして、物をかむと痛い!という程度では歯科医院を受診しない方がほとんどだと思います。そんな口の中の不調を放っておくと大変なことになります。根尖性歯周炎はほとんど自覚症状が無いことが多いのですが、初期症状として弱く鈍い痛みを覚えます。歯の根元の歯肉は、場合によってはわずかに腫れ、押すと痛みます。進行すると痛みは強くなり、ドクドクと脈を打つようになります。ものをかんだ時の痛みもますます強くなり、さらに症状が進行すると発熱することもあります。
②治療は?
細菌に感染してしまった根管(神経の通る管)を徹底的に感染除去し根管内を無菌化する治療を感染根管治療といいます。細かな溝のある細い針金のような器具を使用したり、消毒薬を使用したりします。
しかし、この感染根管治療は実はかなり難しいのです…なぜなら、根っこの中は直接見ることができないため、完全に細菌を取り除くことが非常に難しくなります。
③治療期間は?
「歯医者に通っているのに治らない!」というのは、多くの場合この根管治療です。治療期間は短い場合2~3回で終わることもありますが、長い場合は2~3カ月位かかることもあります。治療後の経過観察を含めると半年から1年位かかる場合もあります。いつまでたっても治らない場合には、歯根が割れていたり、根管の形が非常に複雑だったりする可能性もあり、抜歯になったり、根の先端を切除する手術(根尖切除術)が必要となる場合もあります。長期間になる治療でも中断せずに、最後まで治療を続けることが大事です。
最近では、より効果的な治療器具としてマイクロスコープ(顕微鏡)により拡大して細部を見たり、歯科用CTで3次元的に根管の形態を確認し、根管内を超音波洗浄することで、細菌の入り込んだ細かい部分まで除去することが可能となってきました。
④根尖性歯周炎は歯を抜く病気?
たとえ神経を取り除いたとしても、歯は残しておくべきだといえます。根管治療は簡単なものではありませんが、重度のむし歯でも抜歯を避けることができる重要な治療です。お口全体の健康を守るためにも、根管治療はきちんと受けましょう。
また、根管治療後のよい状態を維持するためには、定期的なメンテナンスが欠かせません。せっかく時間を掛けて治療を受け、残せるようになった歯です。定期健診をきちんと受け、長く健康な状態を守っていきましょう。
小児の歯牙外傷について
子どもが歯をぶつけた!そんな時あなたはどうしますか?自転車で転んでしまったり、ボールがぶつかったり……生活しているとさまざまなトラブルに遭遇します。こういった場合、上の前歯に強い衝撃を受けることがあります。衝撃を受けると歯は「破折」もしくは「脱臼」することがあります。
「破折」はその名の通り歯が欠ける、折れることをいいます。小さく欠けてしまった場合は歯科用の詰め物で治すだけで済みますが、大きく欠けた場合は被せ物を入れたり、中にある神経の治療が必要になります。
「脱臼」とは歯が完全に抜けてしまう「完全脱臼」と、歯が揺れる・位置がずれる「亜脱臼」があります。「完全脱臼」した歯は時間が経つと元に戻せなくなりますが抜けた直後であれば元に戻せる可能性があります。目安は受傷後2時間以内です。
ただし、この際に気をつけなければいけないことがあります。それは「抜けてしまった歯の保存の仕方」です。抜けた歯の根の周りには「歯根膜」と言われる膜が残っています。なんとか歯に付いた汚れやバイ菌をきれいにしようと、ゴシゴシ洗い流してしまう人がいますが、その膜が残っていることで歯が元通りになる可能性があるので軽く汚れを落とす程度にしてください。
どうやって持っていくかですが、乾燥しても歯根膜はやられてしまうので「お口に入れたまま病院に行く」「牛乳やコンタクトの保存液に入れて持っていく」ようにして、すぐに受診することが大切です。
「亜脱臼」した歯の場合は、揺れる歯を歯科用の接着剤やワイヤーで固定します。固定することで傷や周囲の炎症が回復するのを待ちます(骨折した場合のギブスと似ています)。
また、周囲を清潔にすることも重要です。うがい薬を使いながら、柔らかい歯ブラシで磨きましょう。歯の神経が炎症を起こすこともあるので、極端に熱いものや冷たいものを避け、その周りを安静にしてください。数週間で固定が外れるくらい回復しますが、歯の神経が死んでいる場合もあり、後々、歯が黒く変色してくることがあるので定期的に検診を受けることが必要です。
歯をぶつけた際、あごや唇など歯の周りの組織も傷を負うことがあります。唇や頬、歯茎の周りは直接目で診て処置ができますが、あごは直接診ることができません。あごは身体の成長や脳の発達においてとても重要なので、レントゲンで傷がないか、折れていないか確認する必要があります。
小児の歯牙外傷は成長において重要な影響を及ぼすことがあります。このような場合には慌てず、お近くのかかりつけ歯科医院を受診しましょう。
「よく噛むこと」と「咬めること」の効用
①肥満予防 : よく噛んでゆっくり食べると、脳の満腹中枢が働いて満腹感を感じ食べすぎを防ぎます。よく噛まずに早食いをすると、脳が満腹感を感じる前に食べ過ぎてしまい、太りすぎの原因になります。
②味覚の発達 : よく噛むと食べ物は細かくなり、唾液と混ざり合うことにより、食べ物本来の味がわかるようになります。
③言葉の明瞭化 : よく噛むと口や顎の筋肉が発達し、言葉もはっきりと、きれいな発音ができるようになります。また、表情も豊かになります。
④脳の発達・活性化 : よく噛むと、顎の筋肉の働きで脳への血流が良くなり、脳の細胞を活性化します。よく噛むことは子どもの脳の発達を促し、高齢者では認知症の予防になります。
⑤歯科疾患の予防 : よく噛むと唾液の分泌が増え、口の中をきれいにしてくれます。唾液が歯の再石灰化を促進し、細菌を減らし、むし歯や歯周病を防いでくれます。
⑥がんの予防 : 唾液に含まれる酵素が、食べ物に含まれる発がん物質の発がん作用を消す作用があるといわれています。一口30回以上噛んで、食べ物を30秒以上唾液に浸すと効果的と言われます。
⑦胃腸の働きを助ける : よく噛むと食べ物はより細かくなり、また、消化酵素が多く分泌され、食べ物を消化、吸収しやすくなります。そのため、胃腸に負担がかからず、胃腸を丈夫にし、栄養の吸収も良くなります。また、自律神経系の安定にも影響します。
⑧全力を出す : 歯や歯肉を健康にし、顎の筋肉の働きを良くすることで、力を出す時にしっかり食いしばることができ、本来の力を出し切ることができます。
よく噛んで食べることは、体の健康にいいことばかりです。よく噛んで食べるためには、ゆっくりと食べること、お茶や水で流し込まないことが大切です。歯応えのある物を、栄養バランスを良く考えてゆっくりよく噛んで食べましょう。
また、よく噛んで食べる以前に、「咬める」、「噛みしめられる」ということも重要です。自分の歯、あるいは義歯(入れ歯)などで、ちゃんと咬める、噛みしめることができると、体のバランスが保たれ、全身の筋力が発揮でき、転倒予防になります。自分の歯や義歯でちゃんと咬める人には認知症が少ないという報告もあります。いつまでも自分の歯(不幸にして歯を失った方は義歯など)でしっかり咬めるお口を維持し、いつまでも健康に過ごしましょう。
無意識の生活習慣・TCH
無意識のうちに上下の歯をつける癖のことを上下歯列接触癖(Tooth Contacting Habit=TCH)といいます。
上の歯と下の歯は常時接触していると誤解している人も多いようですが、人は通常口を閉じていても上下の歯はどこにも接触していません。歯が触れるのは会話、食事をするとそしゃくえんげきの咀嚼、飲み込みなど嚥下をするときですが、その接触は一瞬ですので、接触時間を合計しても一日あたり20分以内といわれています。現代人が歯を失う理由の約7割はむし歯と歯周病が占めますが、TCHがあると、この2つの病気の進行が加速する可能性が高いといわれています。歯周病の場合、TCHがあると、常時歯に過大な力がかかるため、癖のない患者さんに比べると歯のぐらつきが早まります。むし歯で詰めものやかぶせものをした歯でも、上下の歯が触れる力がそれぞれの歯の耐えられる力の限界を超えてしまうと歯が折れるなどの症状が出てきます。その結果、TCHがある患者さんはない患者さんに比べて速いペースで歯を失っていくことになります。
TCHは、無意識の生活習慣や癖なのでなかなか自分では気づきません。TCHかどうかの判断の一つに口の周りの緊張持続があります。それは、頬の内側や舌の周りに歯形ができているかを見ると分かります。上下の歯を接触させ顎を閉じる閉口筋を緊張させたままでいますと、頬の内側に歯を押しつけたままになるため歯形が付きます。また閉口筋が緊張しているときには舌を動かす舌筋も緊張し、舌の周りの歯や上の口蓋に押し付けたままになるため歯形が舌に付きます。頬の内側と舌のいずれにも歯形がみられる人は、TCHがある可能性が高いと考えられます。しかし、この歯形はTCHのある人の絶対条件ではありません。正確な診断をするには、歯科医に診断してもらう必要があります。
自分にTCHの癖があると分かっても、そこから抜け出すことは大変困難です。そこで、東京医科歯科大学のグループでは、臨床心理学で用いられる「行動変容法」を推奨しています。その方法は、第1ステップでは、数秒間軽く歯を接触させ、その後離してみます。頬の筋肉の感覚の変化を意識し、上下の歯が触れていることで筋肉と歯には常に力が掛かっていることを認識します。第2ステップは、「歯を離す」「リラックス」など脱力するきっかけになる言葉を書いた紙を身の回りに張り、それを見たら脱力し、歯を離すことを繰り返します。繰り返しているとついには貼り紙を目にしただけで、何も考えずに脱力行動をとれるようになります。このように条件反射ができるようになると、第3ステップは、歯が接触しただけで条件反射が起き、歯の接触刺激で無意識に脱力行動が起きるようになります。このようにTCHがなくなれしそうこつば、歯や歯槽骨に掛かる負担は減り、歯の耐久年数は確実に向上するでしょう。
訪問歯科診療を知っていますか?
訪問歯科診療とは、高齢や障がいのため歯科診療所に通院が困難な方に対し、自宅や入居している施設に歯科医師や歯科衛生士が訪問して、歯の治療やお口のケアを行なうことです。診療費はほとんどの場合、医療保険や介護保険などの公的な保険が適用されます。
自宅で介護が必要な高齢者や障がいのある方はお口の清掃がどうしても十分に行えません。清掃状態が悪くなることでむし歯や歯周病が進行し、歯が痛い、グラグラする、折れたなどいろいろな症状が現れます。これら
の症状が現れても、歯科診療所に通院できないまま咀嚼(かむ力)、嚥下(飲み込み)が徐々に低下し、次第に家族との会話、感情表現などの生きる気力が失われていきます。口から味わって食べる楽しみ、意欲がない生活では、全身状態のさらなる悪化、生命の予後にも大きく影響することは最近の研究で広く知られています。
超高齢社会の日本では、在宅医療の充実は重点課題のひとつであり、岐阜県をはじめ全国の歯科医師会で訪問歯科診療の提供体制の充実に取り組んでいます。
訪問歯科診療では歯科医師がコンパクトに設計されたさまざまな診療機器を自宅や施設に持って行くことで、歯科診療所と同様な治療を受けることが可能になってきています。むし歯の治療、入れ歯の調整・修理・作製、歯周病の治療など咀嚼の回復だけでなく、嚥下訓練などのリハビリも可能です。
訪問歯科診療では治療だけでなく口腔内を清潔に保つお手伝い(口腔ケア)も行っています。実は歯科診療所に通院が難しい高齢者や障がい者にこそ、口腔ケアがとても重要なのです。訪問歯科診療を希望される場合は、まず本人や家族の身近な「かかりつけ歯科医」に相談してください。また、ケアマネジャー、地域包括支援センター、地域の歯科医師会で
も訪問歯科診療を行う歯科医院を紹介しています。
自宅でも歯科診療はできます。生涯、口腔ケアを受けるため、ご相談ください。
歯根破折の予防
8020財団の永久歯の抜歯原因調査報告によると歯根破折は歯周病、う蝕に次いで抜歯原因の第3位となり、40代以降は歯周病とともに歯根破折による抜歯が増える傾向にあります。う蝕、歯周病の分野において質の高いメンテナンスをしていると、う蝕、歯周病による抜歯が減少し、歯根破折による抜歯が圧倒的に多くなります。定期的にメンテナンスをしている場合は、歯根破折に注意が必要です。
△歯根破折の原因
①歯根破折した歯は、ほとんどが歯の神経を取る治療がされた場合です。歯の上の部分に大きく穴を開けて治療をするために、歯の強度が弱くなります。また、歯の神経は栄養を送る管のため神経を取ると枯れ木のようになり歯質がもろくなって、割れやすくなります。②ブリッジの土台や部分義歯の支えになっている場合、噛み合わせの力が集中して歯根が耐え切れずに割れてしまうことがあります。③歯ぎしりや噛みしめのクセは、歯に非常に大きな負担をかけ、その力が原因で歯根破折を起こすこともあります。④硬い物を好んで食べることも歯根破折の原因となります。
△歯根破折の予防
①神経を取ると割れやすくなるため、むし歯を作らないようにすることが大切。②歯ぎしりにはマウスピースを歯に装着することが有効です。③歯根破折は初期の段階であれば、抜歯とならないケースもあるため、早期発見できるように定期健診が重要です。④よく噛むことは、身体や脳にとって良いことですが、硬い物を噛むことが歯根破折を引き起こすこともあり「よく噛んで食べること」と「硬い物を積極的に食べること」とを混同しないようにしましょう。