最新情報

お知らせ

オンライン資格確認説明会のアーカイブ

 

内 容:令和4年8月24日(水)に開催された説明会です。

〇オンライン資格確認の趣旨について(安心・安全で質の高い医療を提供していく医療DXの基盤)

〇8月10日の中医協で答申・公表された内容について

・原則義務化の内容について

・医療機関・薬局向け補助金の拡充について

・診療報酬上の加算の取扱いの見直しについて

〇具体的な申し込み手続きなど

〇顔認証付きカードリーダーのデモ

〇質疑応答

開催者:日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会、厚生労働省、社会保障診療報酬支払基金

歯科保健診療車けんし8020披露式を開催

 歯科保健診療車「けんし8020」の老朽化に伴い、この度県の補助をいただき6代目として、新型コロナウイルス感染症のまん延防止対策や災害地での歯科診療も対応可能な車両として誕生しました。

 4月18日(よい歯の日)の午前中には、稲葉神社(岐阜市)でお祓いを済ませ、午後1時から県歯会館で披露式を行いました。式の中ほどから暴風雨となり、雨の中でのテープカットとなりましたが、お蔭様で無事終了することができました。

 現在は、5代目の旧車両を運用しておりますが、最後の整備をして、5月ごろから正式運用が開始されます。

【歯科保健診療車「けんし8020」とは】

 県の委託により県内の障がい児(者)施設などを訪問して、歯科健診や予防処置を行っており、バスという機動性を利用して5代目の診療車は、東日本大震災に災害支援を行うなど歴代の車両は災害支援にも活躍しております。

 

SKE48の歯科衛生士の体験がGYAO!で配信開始


 6月5日(水)1815分からのぎふチャン「Station!」の番組内の「SKEの岐阜県だって地元です!」のコーナーでSKE48のメンバー3人(北野瑠華さん、井田玲音名さん、高畑結希さん)に歯科衛生士体験をしていただきました。その放送内容が、動画配信サイト「GYAO!」でも視聴可能になりました。ぜひ、ご覧下さい。

 
【動画はこちらから】
 

   SKE48メンバー3人による歯科衛生士体験動画



                

平日(木・金)の障がい者への歯科診療をスタート!

平日(木・金)の障がい者への歯科診療をスタート!


 7月5日(金)午後1時から岐阜県口腔保健センター障害者歯科診療所が、平日の診療を木曜日(午前)と金曜日(午後)に限定して開始しました(土日もこれまで通り診療)。

 これまで障がい者専用の同診療所の診療は、土日のみの受け入れ体制だったのですが、朝日大学医科歯科医療センターで約20年障がい者歯科医療に携わってこられた橋本岳英歯科医師を同診療所に常勤で迎えたことによって可能になりました。


岐阜県口腔保健センター障害者歯科診療所の診療時間


   
※木・金・土日ともに、9:00~9:30および16:30~17:00は、急患のみの対応となります。

   

岐阜県民の歯・口腔の健康づくり条例の改正案が議決

岐阜県民の歯・口腔の健康づくり条例の改正案が議決

 全国的にも初の「歯科衛生士の確保・養成及び資質の向上」などの文言が入った同条例の改正案が、6月27日(木)に開催された阜県議会定例会(令和元第3回)で可決されました。

 

 平成22年4月に同条例が初めて制定され、2年連続で骨太の方針に歯科の重要性が明記される中、国の動きに対応すべく改正がなされました

 

△岐阜県民の歯・口腔の健康づくり条例の一部を改正する条例案

  ※岐阜県議会のホームページ

https://www.pref.gifu.lg.jp/gikai/teireikai/heisei31/dai3/giinhatsuan01-3/kengi11.html

噛み癖ありますか?

 皆さんの利き手は右・左どちらでしょうか?利き足(軸足かもしれませんが)は?靴を履く時、風呂に入る時など、決まった足から入りませんか?それはあって当然ですが、食事の時はどうでしょうか?右側・左側のどちらかが噛みやすい、噛みにくいのであれば、それはちょっと要注意です。

 本来、肉食動物はどの方向からでも獲物を捕らえなければいけません。片側からしか捕れないようでは獲物を得る確率が半分になってしまいます。草食動物も片噛みをしていては片側の歯ばかりすり減ってしまい、噛めなくなってしまいます。なのでどちらの動物も両側を均等に使っています。

 しかし、人間という動物はどうもそうではないようです。患者さんに聞くと、多くの人が噛み癖を持っています。噛み癖が原因でトラブルになっている人もいるかもしれません。

 噛み癖があると、得意な側の歯に過度な負担がかかるという大きな問題があります。2人で持つ荷物を1人で持ち続けるには限界があります。いずれ持てなくなってしまいます。歯も同じです。得意な側で噛めなくなった時、反対側で噛もうとしても、もともと不得意になった原因があるわけなので、なかなかうまく噛めません。そうならないためにも、早めに噛みにくい側をつくらないように処置をすることが大切です。

 特に、学童期の子どもは乳歯の生え変わりの時期にぐらぐらの歯を使わずにいて、そのまま片噛みの癖がついてしまったり、食事の時に横を向いてテレビを見る事により、自然に片噛みになってしまいます。

 子どものうちから片側ばかりで噛んでいると、顔の形が左右非対称に発達してしまいます。左右対称の方が人に与える印象が良いそうです。それを放置すると、体までゆがんでいくという説もあります。四十肩、五十肩は片噛みによる体のゆがみが原因と言う整体の先生もいます。

 人間の体は完全に左右対称とは言えませんが、片側に負担をかけすぎることは体にとって良いことではありません。「予防に勝る治療はなし!」左右均等に使えるように気をつけてください。


歯とジュースの関係

 近年、スマートフォンの普及により、インターネットのニュースを見る機会が増えています。歯に関連する記事も目にすることがあります。その中に甘い炭酸ジュースが歯を溶すというものがありました。
 歯は口の中のpHの変化によって成り立っていると言っても過言ではありません。pH5.5が境界で、それよりも低くなる(酸性になる)と歯のカルシウムなどが溶け出す「脱灰」が始まり、高くなる(アルカリ性になる)と唾液中に含まれるカルシウムなどを歯に取り込む「再石灰化」が進んでいきます。む歯菌は自分のエネルギーを得るために砂糖を分解しますが、そのときに酸を作ってしまいます。それに加えてプラークという白い膜のようなものも作ってしまうため、その中のpHが下がり、歯が溶かされるといった状態になっていきます。歯磨きはそのプラークを除去するという目的で大切になります。
 甘い炭酸ジュースはそれ自体が酸性です。そのため、飲んだ時に一時的にpHが下がって脱灰が始まり、その後、唾液により徐々にpHが戻り、5.5を超えると再石灰化が始まります。このように脱灰と再石灰化が繰り返されることで歯は維持されていきますが、このpH5.5を超える前、または超えて間もないうちに再びジュースを飲んだ場合、十分な再石灰化が始まる前にpHが下がり、脱灰ばかりになってしまいます。それがいわゆる「歯を溶かす」状態です。そうならないためには、飲んだ後は水やお茶で洗い流す、キシ リトールガムをかむなどして唾液がたくさん出るようにするといった対処、そして第一にジュースのだらだら飲みをしないことが大切になります。
 徐々に寒くなり、夏のように飲み物を多く口にする時期ではないですが、暖房器具などによる隠れ脱水もあり、保水のためにスポーツドリンクを飲むこともあると思います。しかし、市販のスポーツドリンクも砂糖が含まれるpHの低い飲み物です。歯を大切にするためにだらだら飲みをせず、飲んだら水で洗口をしたり、お茶で洗い流したりすることをおすすめします。

あなたの歯磨き方法正しいですか?

 先日、患者さんに「先生、毎日3回歯磨きしているのに、どうして歯周病になるのでしょうかねぇ?」と言われ、少々厳しい言い方ですが、「磨いているのと、磨けているのは違いますよ。正しい歯磨きの方法を習って帰ってくださいね」と答えました。
 歯科疾患実態調査によると、95%以上の人が毎日歯を磨く習慣があると答えています。一方で、40歳以上の80% 以上の人が歯周病にかかっているという結果もあります。つまり、歯磨きはしていても磨けていない患者さんがたくさんいることになります(歯周病の程度も人によって違うので、まったく磨けていないわけではないですが)。 「では、歯磨きではなく、他の方法(例えば、うがい薬や歯磨き粉など)で歯周病が治らないですか?」と聞かれることもあります。残念ながら、歯に付着する汚れ(歯垢、プラーク)はバイオフィルムと呼ばれ、細菌が何層にも重なってできているため、薬剤の効果はほとんど期待できません。歯科医師としても、何か画期的な薬やもっと簡便な方法があれば、介護の必要な方などは非常に助かるのに-と思うのですが、ブラシで物理的にバイオフィルムを壊すこと以上に良い方法がないのが現状です。
 治療室で歯科衛生士が歯磨き指導をしていると、「この年になって歯磨きを習うなんて恥ずかしいわ」、「この間も習ったのに磨けていないなんて情けない」という患者さんの声を聞くこともあります。ですが、人によって口の中の状況は歯並びも、歯周病の程度も違うので、その人に応じた歯磨き方法を習う機会はなかなかありませんし、すべての歯をしっかり磨くことは大変難しいことなのです。
 歯周病の治療の大前提に原因除去療法という考え方があります。簡単に言えば「病気の原因を取り除くことで歯周病を治す」という考え方です。歯周病は歯の表面についた汚れ(歯垢)が、歯茎に腫れ(炎症)を起こすことで始まります。したがって、歯磨きによって汚れを落とすことは、歯茎の炎症を抑える治療そのものとも言えるのです。
 歯周病は生活習慣病の一つとされています。自分自身に必要な歯磨きの方法をチェックし
て、それを継続することで口の健康だけでなく、全身の健康にもつながります。歯磨きをしているのに血が出たり、歯茎が腫れたりすると感じている方は、一度歯科を受診し、正しい歯磨きの方法を習うといいかもしれません。実際に「歯磨き方法を変えるだけで歯周病が改善した」と実感する患者さんも大勢います。

くすりと歯科治療

 歯科医院で服用中の薬について尋ねられる事があると思います。今回は服用中の薬と歯科治療の関連の中でも特に歯科治療と関連の深い薬のひとつである「抗血小板剤」、いわゆる血液をサラサラにする薬についてお話しします。
 なぜ、歯科治療と「抗血小板剤」は密接な関係があるのでしょうか?それは歯科治療において、量に違いはありますが、出血を伴う処置が多くみられるからです。例を挙げると、抜歯、口腔内の外科手術などがあります。
 そもそも「抗血小板剤」の役目とは何でしょうか?「抗血小板剤」は血小板の働きを抑える薬です。血小板とは、出血時に傷口に集まって塊(血餅)をつくり、血を止める働きをする成分です。ところが、傷口ではなく血液中で塊(血栓)がつくられると、脳や心臓の血そく管を詰まらせ、心筋梗塞や脳梗塞を引き起こす原因となります。
 「抗血小板剤」を服用すると、血栓の発生を防ぐことができます。しかし同時に、出血時の血栓による止血も抑えられ、血が止まりにくくなってしまうのです。
 むし歯や歯根の治療、歯石取りのような一般的な歯科治療においては、多少の出血があってもほとんど問題にはなりません。では、抜歯のような出血を伴う外科処置では、薬を中止したほうがよいのでしょうか?
 いいえ、そうではありません。薬を中止すると、血管が詰まりやすくなり、全身状態を危険にさらす度合が高くなります。従って、現在は休薬をせずに処置を行う場合が多くなっています。もちろんその際は、止血処置を十分に行う必要があります。日本循環器学会の抗凝固・抗血小板療法ガイドラインにおいても、「抜歯時には抗血栓薬の継続が望ましい」と明記されています。
 「抗血小板剤」の種類、投与期間、全身状態などを考慮したうえで、処方医師と歯科医師が連携して判断するため、患者様の自己判断での休薬は避けてください。
 今回は「抗血小板剤」についてお話ししましたが、歯科治療に影響を及ぼす薬は他にもたくさんあります。また、患者様の全身状態も歯科治療に大きく影響します。歯科医院を受診されるときには、かかっている病気と服用中の薬を必ず伝えてください。そして、処方医の指示の下で治療を受けるようにしましょう。そして何より、歯を削ったり、抜いたりすることがないように、毎日のブラッシングと定期的な健診を受けることを心掛けましょう。

くすりと歯科治療

  歯科医院で服用中の薬について尋ねられる事があると思います。今回は服用中の薬と歯科治療の関連の中でも特に歯科治療と関連の深い薬のひとつである「抗血小板剤」、いわゆる血液をサラサラにする薬についてお話しします。
 なぜ、歯科治療と「抗血小板剤」は密接な関係があるのでしょうか?それは歯科治療において、量に違いはありますが、出血を伴う処置が多くみられるからです。例を挙げると、抜歯、口腔内の外科手術などがあります。
 そもそも「抗血小板剤」の役目とは何でしょうか?「抗血小板剤」は血小板の働きを抑える薬です。血小板とは、出血時に傷口に集まって塊(血餅)をつくり、血を止める働きをする成分です。ところが、傷口ではなく血液中で塊(血栓)がつくられると、脳や心臓の血そく管を詰まらせ、心筋梗塞や脳梗塞を引き起こす原因となります。
 「抗血小板剤」を服用すると、血栓の発生を防ぐことができます。しかし同時に、出血時の血栓による止血も抑えられ、血が止まりにくくなってしまうのです。
 むし歯や歯根の治療、歯石取りのような一般的な歯科治療においては、多少の出血があってもほとんど問題にはなりません。では、抜歯のような出血を伴う外科処置では、薬を中止したほうがよいのでしょうか?
 いいえ、そうではありません。薬を中止すると、血管が詰まりやすくなり、全身状態を危険にさらす度合が高くなります。従って、現在は休薬をせずに処置を行う場合が多くなっています。もちろんその際は、止血処置を十分に行う必要があります。日本循環器学会の抗凝固・抗血小板療法ガイドラインにおいても、「抜歯時には抗血栓薬の継続が望ましい」と明記されています。
 「抗血小板剤」の種類、投与期間、全身状態などを考慮したうえで、処方医師と歯科医師が連携して判断するため、患者様の自己判断での休薬は避けてください。
 今回は「抗血小板剤」についてお話ししましたが、歯科治療に影響を及ぼす薬は他にもたくさんあります。また、患者様の全身状態も歯科治療に大きく影響します。歯科医院を受診されるときには、かかっている病気と服用中の薬を必ず伝えてください。そして、処方医の指示の下で治療を受けるようにしましょう。そして何より、歯を削ったり、抜いたりすることがないように、毎日のブラッシングと定期的な健診を受けることを心掛けましょう。

歯の痛み~関連痛~

  先日、来院された患者様。切実な表情と口調で「右上の一番奥がズキズキする、何とかして!」エックス線、歯周検査などの結果、奥から四番目のむし歯が原因の可能性が高いとご説明した。患者様は「いや、そこは痛くないから一番奥の治療をしてください」とのこと。その日は消毒と消炎鎮痛薬を処方して、経過を診ることにした。
 次の日、痛みが続くと来院され、奥から四番目の治療を納得していただき処置。1週間後、「あれからすぐ楽になったわ。不思議ね。ほんとに一番奥が痛かったのに」とおっしゃった。患者様も僕もホッとひと安心。
 関連痛とは痛みの原因となる部位とは違う部位に感じる痛みのことです。痛み刺激が神経を通じて脳に伝わる際、同じまたは隣接する神経束の刺激として誤認するためとされています。
 口の周りで起きる関連痛で身近なものとしては、かき氷などを食べた時に咽頭神経が刺激され、こめかみがキーンと痛く感じるもので、「アイスクリーム頭痛」と呼ばれます。歯髄炎(むし歯)で耳やこめかみ、急性上顎洞炎で歯に痛みを感じることもあります。上の歯が原因で下の歯に痛みを感じる、またその逆の場合もあります。重大なものとして、狭心症などでは心臓部の痛みを左上腕から下顎、奥歯の痛みとして感じる場合があります。
 関連痛とはやや異なりますが、非定形歯痛(突発性歯痛)と呼ばれるものがあります。「治療、抜歯したのに歯痛がとれない」、「いくら検査しても原因が見つからない」といった原因不明の歯痛です。不明とされるものの原因に関する疑わしい説はあり、これも神経伝達が混乱することによる神経因性説が有力説の一つで、その対処法も考えられています。
 治療を受ける場合は、ご自身の感じる痛みの様子をしっかり伝えた上で、じっくり相談して治療方針を決定するのが、痛みから解放される近道ではないでしょうか。

学校でCOと言われて安心していませんか?

  新年度が始まり、学校で歯・口の健康診断(健診)が行われる時期です。そろそろ健診結果のお知らせを学校からもらってくるころでしょうか?そのお知らせの中で「むし歯になりそうな歯(CO)があります」にチェックが入っていませんでしたか?
1.CO(シー・オー)とは
 COとは削って治療する必要はないですが、このまま放置すると進行する可能性が高いむし歯の状態で要観察歯のことをいいます。しかし、保護者の皆さんは治療する必要がないイコール歯科医院に行かなくて良いと考えて安心してしまいがちで、これが大きな問題だと思います。
 学校での健診はあくまでもスクリーニングで確定診断ではありません。そして、COでは進行を防ぐために歯の清掃や甘いものを制限するといった食生活の改善や生活リズムの改善をする必要があり、フッ化物利用などを行うべきであり、そういった元で注意深く観察していかなくてはならないのです。
2.COの下に隠れたむし歯の進行
 本当にCO程度のむし歯なのかどうかはやはり歯科医院を受診し、レントゲンなどの特殊器具を使い確定診断してもらう必要があります。毎年の健診でCOと言われ続け安心していたら突然痛みが出現して来院される子どもさんがときどきいます。診療室で診察してみると一見したところではむし歯による穴があいてないように見えてもレントゲンを撮ると中で大きくなっていました。学校健診でCO以外のチェックが全くないのでそれまで何年も歯科医院を受診していなかったことにより見過ごされてしまったと思われます。また、見たところ全くむし歯がないと思ってもレントゲンで歯と歯の間にむし歯がみつけられることもよくあります。
3.歯科医院での定期的な健診を
 学校健診で治療が必要な項目にチェックが入っている子はすぐに歯科医院を受診するのは当然ですが、COなどすぐに受診の必要がないと記載されている場合も年に2~3回程度の歯科医院での定期健診をお勧めします。
 特に乳歯との生え替わりの時期は重要で、後から生えてくるはずの永久歯がない場合があり、10人に1人いるとも言われています。また、何らかの異常で永久歯が正常に生えてこられないこともあります。診療室でないと見つけられないむし歯以外の異常も見つけることができます。
 お口の病気はむし歯だけではありません。COと言われて安心しないで、学校健診では見つけられない歯やお口全体の異常を早期に発見できるだけでなく、お口の健康を維持していくためにも歯科医院での定期的な健診をお勧めします。

骨まで溶かす「根尖(こんせん)性歯周炎」

  むし歯を放置していませんか?物をかんだ時痛くありませんか?その痛み、歯根の先がうんでしまう病気、「根尖性歯周炎」かも!
①どんな症状が現れるの?
  歯が浮いた感じがして、物をかむと痛い!という程度では歯科医院を受診しない方がほとんどだと思います。そんな口の中の不調を放っておくと大変なことになります。根尖性歯周炎はほとんど自覚症状が無いことが多いのですが、初期症状として弱く鈍い痛みを覚えます。歯の根元の歯肉は、場合によってはわずかに腫れ、押すと痛みます。進行すると痛みは強くなり、ドクドクと脈を打つようになります。ものをかんだ時の痛みもますます強くなり、さらに症状が進行すると発熱することもあります。
②治療は?
  細菌に感染してしまった根管(神経の通る管)を徹底的に感染除去し根管内を無菌化する治療を感染根管治療といいます。細かな溝のある細い針金のような器具を使用したり、消毒薬を使用したりします。
  しかし、この感染根管治療は実はかなり難しいのです…なぜなら、根っこの中は直接見ることができないため、完全に細菌を取り除くことが非常に難しくなります。
③治療期間は?
  「歯医者に通っているのに治らない!」というのは、多くの場合この根管治療です。治療期間は短い場合2~3回で終わることもありますが、長い場合は2~3カ月位かかることもあります。治療後の経過観察を含めると半年から1年位かかる場合もあります。いつまでたっても治らない場合には、歯根が割れていたり、根管の形が非常に複雑だったりする可能性もあり、抜歯になったり、根の先端を切除する手術(根尖切除術)が必要となる場合もあります。長期間になる治療でも中断せずに、最後まで治療を続けることが大事です。
 最近では、より効果的な治療器具としてマイクロスコープ(顕微鏡)により拡大して細部を見たり、歯科用CTで3次元的に根管の形態を確認し、根管内を超音波洗浄することで、細菌の入り込んだ細かい部分まで除去することが可能となってきました。
④根尖性歯周炎は歯を抜く病気?
 たとえ神経を取り除いたとしても、歯は残しておくべきだといえます。根管治療は簡単なものではありませんが、重度のむし歯でも抜歯を避けることができる重要な治療です。お口全体の健康を守るためにも、根管治療はきちんと受けましょう。
  また、根管治療後のよい状態を維持するためには、定期的なメンテナンスが欠かせません。せっかく時間を掛けて治療を受け、残せるようになった歯です。定期健診をきちんと受け、長く健康な状態を守っていきましょう。

小児の歯牙外傷について

 子どもが歯をぶつけた!そんな時あなたはどうしますか?自転車で転んでしまったり、ボールがぶつかったり……生活しているとさまざまなトラブルに遭遇します。こういった場合、上の前歯に強い衝撃を受けることがあります。衝撃を受けると歯は「破折」もしくは「脱臼」することがあります。
 「破折」はその名の通り歯が欠ける、折れることをいいます。小さく欠けてしまった場合は歯科用の詰め物で治すだけで済みますが、大きく欠けた場合は被せ物を入れたり、中にある神経の治療が必要になります。
 「脱臼」とは歯が完全に抜けてしまう「完全脱臼」と、歯が揺れる・位置がずれる「亜脱臼」があります。「完全脱臼」した歯は時間が経つと元に戻せなくなりますが抜けた直後であれば元に戻せる可能性があります。目安は受傷後2時間以内です。
 ただし、この際に気をつけなければいけないことがあります。それは「抜けてしまった歯の保存の仕方」です。抜けた歯の根の周りには「歯根膜」と言われる膜が残っています。なんとか歯に付いた汚れやバイ菌をきれいにしようと、ゴシゴシ洗い流してしまう人がいますが、その膜が残っていることで歯が元通りになる可能性があるので軽く汚れを落とす程度にしてください。
 どうやって持っていくかですが、乾燥しても歯根膜はやられてしまうので「お口に入れたまま病院に行く」「牛乳やコンタクトの保存液に入れて持っていく」ようにして、すぐに受診することが大切です。
 「亜脱臼」した歯の場合は、揺れる歯を歯科用の接着剤やワイヤーで固定します。固定することで傷や周囲の炎症が回復するのを待ちます(骨折した場合のギブスと似ています)。
 また、周囲を清潔にすることも重要です。うがい薬を使いながら、柔らかい歯ブラシで磨きましょう。歯の神経が炎症を起こすこともあるので、極端に熱いものや冷たいものを避け、その周りを安静にしてください。数週間で固定が外れるくらい回復しますが、歯の神経が死んでいる場合もあり、後々、歯が黒く変色してくることがあるので定期的に検診を受けることが必要です。
 歯をぶつけた際、あごや唇など歯の周りの組織も傷を負うことがあります。唇や頬、歯茎の周りは直接目で診て処置ができますが、あごは直接診ることができません。あごは身体の成長や脳の発達においてとても重要なので、レントゲンで傷がないか、折れていないか確認する必要があります。
 小児の歯牙外傷は成長において重要な影響を及ぼすことがあります。このような場合には慌てず、お近くのかかりつけ歯科医院を受診しましょう。

「よく噛むこと」と「咬めること」の効用

「よく噛んで食べましょう」といわれますが、「よく噛んで食べること」の効果はご存知でしょうか。よく噛んで食べると次の効果があるといわれています。

①肥満予防 : よく噛んでゆっくり食べると、脳の満腹中枢が働いて満腹感を感じ食べすぎを防ぎます。よく噛まずに早食いをすると、脳が満腹感を感じる前に食べ過ぎてしまい、太りすぎの原因になります。

②味覚の発達 : よく噛むと食べ物は細かくなり、唾液と混ざり合うことにより、食べ物本来の味がわかるようになります。

③言葉の明瞭化 : よく噛むと口や顎の筋肉が発達し、言葉もはっきりと、きれいな発音ができるようになります。また、表情も豊かになります。

④脳の発達・活性化 : よく噛むと、顎の筋肉の働きで脳への血流が良くなり、脳の細胞を活性化します。よく噛むことは子どもの脳の発達を促し、高齢者では認知症の予防になります。

⑤歯科疾患の予防 : よく噛むと唾液の分泌が増え、口の中をきれいにしてくれます。唾液が歯の再石灰化を促進し、細菌を減らし、むし歯や歯周病を防いでくれます。

⑥がんの予防 : 唾液に含まれる酵素が、食べ物に含まれる発がん物質の発がん作用を消す作用があるといわれています。一口30回以上噛んで、食べ物を30秒以上唾液に浸すと効果的と言われます。

⑦胃腸の働きを助ける : よく噛むと食べ物はより細かくなり、また、消化酵素が多く分泌され、食べ物を消化、吸収しやすくなります。そのため、胃腸に負担がかからず、胃腸を丈夫にし、栄養の吸収も良くなります。また、自律神経系の安定にも影響します。

⑧全力を出す : 歯や歯肉を健康にし、顎の筋肉の働きを良くすることで、力を出す時にしっかり食いしばることができ、本来の力を出し切ることができます。

 よく噛んで食べることは、体の健康にいいことばかりです。よく噛んで食べるためには、ゆっくりと食べること、お茶や水で流し込まないことが大切です。歯応えのある物を、栄養バランスを良く考えてゆっくりよく噛んで食べましょう。

 また、よく噛んで食べる以前に、「咬める」、「噛みしめられる」ということも重要です。自分の歯、あるいは義歯(入れ歯)などで、ちゃんと咬める、噛みしめることができると、体のバランスが保たれ、全身の筋力が発揮でき、転倒予防になります。自分の歯や義歯でちゃんと咬める人には認知症が少ないという報告もあります。いつまでも自分の歯(不幸にして歯を失った方は義歯など)でしっかり咬めるお口を維持し、いつまでも健康に過ごしましょう。

無意識の生活習慣・TCH

  無意識のうちに上下の歯をつける癖のことを上下歯列接触癖(Tooth Contacting Habit=TCH)といいます。
 上の歯と下の歯は常時接触していると誤解している人も多いようですが、人は通常口を閉じていても上下の歯はどこにも接触していません。歯が触れるのは会話、食事をするとそしゃくえんげきの咀嚼、飲み込みなど嚥下をするときですが、その接触は一瞬ですので、接触時間を合計しても一日あたり20分以内といわれています。現代人が歯を失う理由の約7割はむし歯と歯周病が占めますが、TCHがあると、この2つの病気の進行が加速する可能性が高いといわれています。歯周病の場合、TCHがあると、常時歯に過大な力がかかるため、癖のない患者さんに比べると歯のぐらつきが早まります。むし歯で詰めものやかぶせものをした歯でも、上下の歯が触れる力がそれぞれの歯の耐えられる力の限界を超えてしまうと歯が折れるなどの症状が出てきます。その結果、TCHがある患者さんはない患者さんに比べて速いペースで歯を失っていくことになります。
 TCHは、無意識の生活習慣や癖なのでなかなか自分では気づきません。TCHかどうかの判断の一つに口の周りの緊張持続があります。それは、頬の内側や舌の周りに歯形ができているかを見ると分かります。上下の歯を接触させ顎を閉じる閉口筋を緊張させたままでいますと、頬の内側に歯を押しつけたままになるため歯形が付きます。また閉口筋が緊張しているときには舌を動かす舌筋も緊張し、舌の周りの歯や上の口蓋に押し付けたままになるため歯形が舌に付きます。頬の内側と舌のいずれにも歯形がみられる人は、TCHがある可能性が高いと考えられます。しかし、この歯形はTCHのある人の絶対条件ではありません。正確な診断をするには、歯科医に診断してもらう必要があります。
 自分にTCHの癖があると分かっても、そこから抜け出すことは大変困難です。そこで、東京医科歯科大学のグループでは、臨床心理学で用いられる「行動変容法」を推奨しています。その方法は、第1ステップでは、数秒間軽く歯を接触させ、その後離してみます。頬の筋肉の感覚の変化を意識し、上下の歯が触れていることで筋肉と歯には常に力が掛かっていることを認識します。第2ステップは、「歯を離す」「リラックス」など脱力するきっかけになる言葉を書いた紙を身の回りに張り、それを見たら脱力し、歯を離すことを繰り返します。繰り返しているとついには貼り紙を目にしただけで、何も考えずに脱力行動をとれるようになります。このように条件反射ができるようになると、第3ステップは、歯が接触しただけで条件反射が起き、歯の接触刺激で無意識に脱力行動が起きるようになります。このようにTCHがなくなれしそうこつば、歯や歯槽骨に掛かる負担は減り、歯の耐久年数は確実に向上するでしょう。


訪問歯科診療を知っていますか?

訪問歯科診療とは、高齢や障がいのため歯科診療所に通院が困難な方に対し、自宅や入居している施設に歯科医師や歯科衛生士が訪問して、歯の治療やお口のケアを行なうことです。診療費はほとんどの場合、医療保険や介護保険などの公的な保険が適用されます。

 自宅で介護が必要な高齢者や障がいのある方はお口の清掃がどうしても十分に行えません。清掃状態が悪くなることでむし歯や歯周病が進行し、歯が痛い、グラグラする、折れたなどいろいろな症状が現れます。これら

の症状が現れても、歯科診療所に通院できないまま咀嚼(かむ力)、下(飲み込み)が徐々に低下し、次第に家族との会話、感情表現などの生きる気力が失われていきます。口から味わって食べる楽しみ、意欲がない生活では、全身状態のさらなる悪化、生命の予後にも大きく影響することは最近の研究で広く知られています。

超高齢社会の日本では、在宅医療の充実は重点課題のひとつであり、岐阜県をはじめ全国の歯科医師会で訪問歯科診療の提供体制の充実に取り組んでいます。

 訪問歯科診療では歯科医師がコンパクトに設計されたさまざまな診療機器を自宅や施設に持って行くことで、歯科診療所と同様な治療を受けることが可能になってきています。むし歯の治療、入れ歯の調整・修理・作製、歯周病の治療など咀嚼の回復だけでなく、下訓練などのリハビリも可能です。

 要介護の高齢者に多い病気で誤性肺炎があります。これは、お口の細菌などが気管(肺)に入って(誤して)発病する病気です。清掃状態が悪く、お口が不潔な状態で、体力の低下がみられる方は、食物の残りかすなどが気管に入りやすく、細菌感染つまり肺炎を起こしてしまいます。日本人の死亡原因上位は肺炎で、高齢者の肺炎の70% 以上が口腔内の細菌が気管に入ることが関係していると言われています。誤性肺炎の予防には口腔内を清潔に保つことが大切です。

訪問歯科診療では治療だけでなく口腔内を清潔に保つお手伝い(口腔ケア)も行っています。実は歯科診療所に通院が難しい高齢者や障がい者にこそ、口腔ケアがとても重要なのです。訪問歯科診療を希望される場合は、まず本人や家族の身近な「かかりつけ歯科医」に相談してください。また、ケアマネジャー、地域包括支援センター、地域の歯科医師会で

も訪問歯科診療を行う歯科医院を紹介しています。

自宅でも歯科診療はできます。生涯、口腔ケアを受けるため、ご相談ください。

歯根破折の予防

 歯根破折とは、歯の上の部分ではなく、歯茎の中の根が割れたり、ヒビが入る状態のことです。歯根破折を起こすと①歯茎が腫れるうみ②根の先にできた膿の袋から出てきた膿が歯茎に穴を開けてニキビのような出口を作る場か合がある③差し歯が何度も取れる④噛んだ時に痛みが出る⑤根の治療をしても、症状が改善しないことがある⑥割れていても症状がでないこともあります。
 8020財団の永久歯の抜歯原因調査報告によると歯根破折は歯周病、う蝕に次いで抜歯原因の第3位となり、40代以降は歯周病とともに歯根破折による抜歯が増える傾向にあります。う蝕、歯周病の分野において質の高いメンテナンスをしていると、う蝕、歯周病による抜歯が減少し、歯根破折による抜歯が圧倒的に多くなります。定期的にメンテナンスをしている場合は、歯根破折に注意が必要です。

△歯根破折の原因
①歯根破折した歯は、ほとんどが歯の神経を取る治療がされた場合です。歯の上の部分に大きく穴を開けて治療をするために、歯の強度が弱くなります。また、歯の神経は栄養を送る管のため神経を取ると枯れ木のようになり歯質がもろくなって、割れやすくなります。②ブリッジの土台や部分義歯の支えになっている場合、噛み合わせの力が集中して歯根が耐え切れずに割れてしまうことがあります。③歯ぎしりや噛みしめのクセは、歯に非常に大きな負担をかけ、その力が原因で歯根破折を起こすこともあります。④硬い物を好んで食べることも歯根破折の原因となります。

△歯根破折の予防
①神経を取ると割れやすくなるため、むし歯を作らないようにすることが大切。②歯ぎしりにはマウスピースを歯に装着することが有効です。③歯根破折は初期の段階であれば、抜歯とならないケースもあるため、早期発見できるように定期健診が重要です。④よく噛むことは、身体や脳にとって良いことですが、硬い物を噛むことが歯根破折を引き起こすこともあり「よく噛んで食べること」と「硬い物を積極的に食べること」とを混同しないようにしましょう。

歯の変色(原因と禁忌症)

  歯を白くしたいと思っている方は、変色原因により現在の医療技術で対応できる場合がある。その希望に応えるには、原因を探り出すことが重要である。また行ってはいけない場合もあることを知ってもらいたい。

原因①外因性着色
 オーラルケアの上手、下手あるいは歯牙のこうごう形態や歯面の状態、歯並びや咬合の不正などにより歯石に付着したステインは歯を汚らしく見せ判別も容易である。また喫煙、赤ワイン、コーヒー、紅茶、ウーロン茶などの反復摂取は着色を悪化させる原因で、着色程度はしこうこれらの嗜好品の種類と摂取した期間や頻度により大きく異なる。これらの外因性着色を除去するだけなら「PMTC」で十分対応できるが「ホワイトニング」あるいは「ホワイトニングとPMTCの併用」で一層効果的に処理できる。

原因②内因性着色
 歯冠のエナメル質や象牙質の構造自体に着色が染み込んだようなもので、疾病や外傷あるいは薬剤の副作用を原因とするが変色に至る影響を受けた時期から二つのタイプに分けられる。
a.歯の萌出以前に影響を受けた場合は、ほぼ歯列全体に変色がみられることが特徴である。日本で多くみられるテトラサイクリン系抗生物質を原因とする変色で、母親が妊娠後半期にテトラサイクリン※㋐を服用した場合や小児期に服用した場合に現れ、変色が重篤な場合には「ホワイトニング」だけでは色調を改善することは困難である。
b.歯の萌出後に影響を受けた場合は、歯列全体ではなく一歯だけに限定されることを特徴とする。特に歯科材料も変色の原因となり、アマルガム※㋑に代表される金属修復物の成分が溶出して歯質に浸入すれば着色原因となる。さらに、根の治療や打撲による神経の退行性変化も原因の一つである。
※㋐テトラサイクリンの生産は1965~1970年をピークとするため、その時期に胎児や小児だった年代層に偏在することが特徴。※㋑金属イオンに対する処置としてホワイトニングは無効と判定されている。

原因③高齢化
 病的現象ではなく加齢により徐々に歯の色調が濃くなる自然現象で、象牙質が歯髄方向に肥厚するなどの要因により、高齢化とともに黄ばみが目立つようになる。

原因④DNA由来の黄ばみ
 ここでは病的因子の作用による変色を指しているわけではなく、親子で肌の色や髪の色が似てしまうように遺伝子情報による黄ばみの強い歯を対象とする。以前はナチュラルと認識され問題視されることはなかった変色。

原因⑤審美指向
 「自分の体のパーツを視覚的に整えよう」というきわめて現代的な思考は一つの原因にまとめられる。
 以上のことからホワイトニングはあらゆる症例に対応できるほど万能ではなく、さまざまな制約があるために判断が重要である。そのため変色の原因を利用する。効果が得られない場合や生体に危害をおよぼす可能性がある場合を禁忌症と判定する。

禁忌症具体例
①妊娠や授乳中の女性
 ホワイトニングは緊急を有する治療ではないため、精神的、肉体的に不安定なこの時期を避け安心して治療を受けられるまで待った方がよい。
②無カタラーゼ症※㋒
 薬剤が有害物質として体内に残留するので治療不可。
※㋒オキシドールを傷口に塗布して白い泡がでない場合無カタラーゼ症の疑いが濃厚である。
③エナメル質形成不全症、象牙質不全症
 深部まで薬剤が浸透しやすいため、ホワイトニング剤の強い刺激により歯髄(神経)がダメージを受ける可能性大。仮に障害を起こさずに白さが得られたとしても歯冠形態が不完全なためホワイトニングだけで審美性を完全に回復させるのは困難。

口腔がんとは?


 わが国における口腔がんの罹患(りかん)率はがん全体のおよそ2% に過ぎませんが、私たちが生きていくうえで必要不可欠な「食べる」「飲む」「話す」「呼吸する」といった口腔機能が大きく損なわれQOL(生活の質)が著しく低下し、また生命を脅かす重大な病気です。
 口腔ガンの後天的な原因は、喫煙や過度の飲酒、口腔内の不衛生、不適合な義歯による慢性的な口腔粘膜への刺激、栄養不良やウイルスなどが知られています。総じて、口腔がんに罹患するリスクが最も高いタイプは50歳以上の男性で飲酒時にタバコを吸う習慣のある人と言われています。飲酒時の喫煙によりタバコに含まれる発がん性物質がアルコールで溶かされて口腔粘膜に作用するため、よりリスクが高いとされています。
 一般的に口の中の病気はかなり悪化するまで我慢してしまうことが多く、がんのような早期発見により生存率が上昇する場合でも進行してから来院することが多いようです。がんに限らず口の中では「出血がある」「膿が出る」「痛みがある」などさまざまな症状が出ますが、これがもし顔や体の皮膚に起こったとしたらすぐに病院に向かうでしょう。
①歯肉や頬粘膜に無症状でイボのような白っぽい隆起がある②義歯調整後の粘膜の傷や原因不明の傷が2週間以上経過しても治らない③粘膜の表面に境界が不明瞭な硬いしこりがある④抜歯後の治癒が遅く抜歯窩から出血しやすい肉芽組織が盛り上がっている⑤一定の部位の粘膜表面が赤くただれている⑥顎顔面領域の原因不明の痛みが次第にしびれに変わってきた―などの所見があれば早急に検査を受ける必要があります。
また、口腔がんの予防には禁煙あるいは節煙を行う、禁酒あるいは適量飲酒を行う、口ほてつ腔内を清潔に保つ、適切なう蝕治療、補綴治療、歯周治療を行い口腔環境を整える、香辛料をとり過ぎない、バランスの良い食事をとる、などが挙げられます。
 口腔がんは早期に発見できれば患部を切除するのみで治癒する可能性が高いですが、発見が遅れて腫瘍が大きくなっていると大幅な切除手術が必要で術後の機能障害も重症となります。口腔がんの切除手術を行う際には、損なわれた部分を他の皮膚や筋肉を使って移植するなどの再建手術が行われます。しかし、外見上は復元されたとしても、移植した組織が舌などの口腔内組織の機能を果たすことはできません。切除範囲が大きいほど術後の飲食や発音が困難になるため、QOLの著しい低下が懸念されます。
 口腔がんは日ごろの定期健診で早期発見できることがほとんどです。痛くなくても定期健診にいきましょう。

歯ぎしりブラキシズム

△症状として
 歯ぎしりは、口腔の基本的な機能である咀嚼(そしゃく)、発音などには障害はないものの、閉口状態で上下顎の歯を持続的にくいしばったり、すり合わせたり、間欠的に(一定の時間をおいてまた起こる)かみ合わせたりする習癖です。歯ぎしりは夜間睡眠中に生じるために、本人はまったく自覚していないことがほとんどです。
 口腔内所見としては上下顎の咬合状態には大きな問題はないものの、上下顎の特定の歯の咬合状態に一致して、とくに犬歯を含む小臼歯、大臼歯の咬耗がよくみられます。そのためにエナメル質がすり減り、咬合面(歯のかむ面)の凸凹がなくなり、象牙質が露出し、アイスクリームなどの冷たいものがしみることもあります。
△診断として
 歯の咬耗、咬頭嵌合位(こうとうかんごうい)(歯がかみ合う位置)における垂直的位置不正(おもに上顎と下顎の垂直的間隔が歯の咬耗によって小さくなることを指す)、家族などへの聞き取りなどによって診断がつきます。
△ 原因には
 局所的な因子、全身的な因子、精神的な因子があり、原因の特定はむずかしい場合が大多数です。局所的な因子としては咬合の不調和があげられますが、実際にはかみ合わせの高い金属冠や充填物が原因となって生じてきます。
 全身的な因子によって起こるとされる症例は、甲状腺機能亢進や栄養障害などの合併が考えられますが、いまだ特定することができません。
 また、精神的な因子については、欲求不満、悔しさ、怒り、悲しみなどの純粋な精神的な緊張の場合に生じると言われていますが、各種の運動の選手のように心身両面にわたるストレスが生じる場合には、非常に起こりやすいことがスポーツ医学者によって、指摘されています。すなわち、習慣病的な部分があります。
△治療として
 前述のように3種の発症の因子が考えられるところから、治療も根本的には発症因子に対応してなすべきですが、実際にはそれが複雑に絡んでいることが多く、少しずつ発症因子を取り除くことが大事です。歯ぎしりは、寝食をともにする人に迷惑がかかる場合がありますので、スプリントの装着などは有効な治療法の一つです。

食いしばり


 最近は、ストレスを抱えて生活することが多い時代です。それは仕事であったり、育児であったり、友人関係などさまざまな理由で人はストレスを感じ、それはささいなものから深刻なものまでいろいろです。
   患者さんから①無意識に歯を食いしばっていることがある②あごがだるい③頬や舌に痕
がつくなどの相談を受けることがあります。ふと気がつくと食いしばっていて家族から歯ぎしりを指摘されたなどです。食いしばりや歯ぎしりの主な原因はストレスや緊張にあるといわれており、人間は日常生活の中で抱えるさまざまなストレスを、歯ぎしりや食いしばりによって無意識に解消しているのです。最近ではデスクワークの増加によりその頻度は増加傾向にあるといわれています。 また、口臭を気にされている人にも口元に緊張が見られ食いしばるという事例もあります。
 これだけのストレス社会でストレスを完全になくすことはほぼ不可能かと思いますが、食いしばりや歯ぎしりは放置するしかないでしょうか?それは危険です。過剰なストレス状態における過度の食いしばりを日常的に行っている方の中にはその負担から咬筋(こうきん)や側頭筋などの筋肉が緊張し頭痛や肩こり、耳鳴りを起こす方もいます。また過度にかかる咬合力によ
り歯のすり減りや破折を起こしたり、それが原因で知覚過敏を起こすこともあります。
 さらに歯を支える歯周組織、骨や歯肉の炎症から始まり急激に歯周病が進行するケースもあります。またその結果、顎関節症を引き起こすこともあります。
 ではどうすればいいか。よくいわれるのが、まずは気づいたらすぐ食いしばりをやめる。これを意識するようにすると早期に食いしばりに気づくようになり、結果歯にかかる負担は軽減します。そのため、職場などでは食いしばりに気がつけるように、至る所に「歯を離す」というメモを貼るのも有効でしょう。またリラックスするのも大切ですので定期的な深呼吸などもいいかそしゃくと思います。人は一日の間で咀嚼を含め歯をかみ合わせている時間はだいたい10分位だそうです。無意識に食いしばっている方はその時間がより長くなっているので、気づいたときに食いしばりをやめるだけでもかなりの効果があるといわれています。またご飯をゆっくり食べることも必要と言われています。食いしばりのある人の特徴に、早食いをする方が多いそうです。食事をする際、ものをゆっくり優しくかむことを意識するだけでも効果があるそうです。ガムをかむことで食いしばりを抑制することもいわれています。ガムをかむことで上下の歯を離すことができます。またかんでいるガムは口の中で球体にし、口蓋に押し付けることをしても食いしばりは回避できます。また歯ぎしりをしている人は枕が高い人もいるそうですので、一度正しい枕の高さを見てもらうこともいいかと思います。
 日常の中でちょっとした改善やセルフケアで、結果健康な口腔環境を維持できるとすれば、とてもいいことだと思います。それでもやはり症状が気になるのであれば、それは早めにかかりつけの歯科医院を受診することが望ましいと思います。

歯軋り(はぎしり)

 朝起きるとなんとなく顎のあたりが痛い、または違和感が少しあると思ったことはありませんか?それは、もしかしたら就寝中に歯軋りをしている可能性があります。歯軋りは発症していても自分では気がつきにくい病気です。歯軋りを起こしてしまう原因は歯並びなど歯が原因によるものと思いがちですが、実は歯による原因だけではなく日々の生活習慣も深く関わってきます。原因は科学的にはまだ実証されていませんが、いろいろな原因の中から4つほど紹介していきます。

①ストレスが原因
 歯軋りの一番の原因としてあげられるのがストレスです。現代社会はストレス社会と言われており、多くの人がストレスを感じながら生活をしています。そして、歯軋りを起こしてしまう人はそのストレスをうまく発散できずため込んでしまうため、その結果就寝中にたまったストレスにより歯を食いしばり、歯軋りをしてしまうことがあると言われています。

②歯のかみ合わせの悪さによる
 歯軋りは歯並びの悪さから起こることもあります。また、むし歯治療中で治療が終わっていない場合や、治療の際に歯に詰めた物が合っていない、歯を抜いた後そのままにしているなど、顎の筋肉の緊張がアンバランスになっていることが原因で歯軋りが起こると言われています。

③喫煙、飲酒が原因
 喫煙や飲酒も歯軋りを引き起こしやすい原因としてあげられます。アルコールや煙草のニコチンが関連していると言われています。

④逆流性食道炎による
 一見、関係性のないように思える逆流性食道炎も歯軋りの原因ではないかと最近言われています。歯軋りは放っておくと❶歯や顎にダメージが積み重なり顎関節症や❷歯が磨り減って知覚過敏になったり❸歯が割れて抜歯することになったり❹歯周病の悪化の原因や❺睡眠が満足にできず不眠になり、体調をくずしたりもします。

 歯軋りは体を壊す原因の一つだと思います。一度歯医者さんで歯軋りについての受診をおすすめします。

正しい口腔ケアを行っていますか?

 近年、歯周病が早産や低体重児出産に関わっていることが報告され、その後、心筋梗塞、糖尿病、誤嚥性肺炎などの全身疾患にも関係していることがわかってきている。さらに咀嚼機能と認知症との関連性、手術前後の口腔ケアによる術後合併症の関連性など、口腔環境が全身の健康と密接に関連していることも明らかになってきた。また「健康日本21」において「歯周病は口の中のデンタルプラーク(歯垢)が最も大きな原因で発症するため、歯科を受診することや正しい歯みがきを続けることで予防できる生活習慣病としての性格を有している」記載されている。そのため、歯と口腔のケアは、むし歯や歯周病予防のためだけでなく、全身の健康を守るためにとても大切である。
 現在、口腔ケアは、歯や口腔粘膜など口腔内の汚れを取り除く器質的口腔ケア(歯みがきや専門的な歯面清掃など)と口腔機能(咀嚼や発音など)の維持・回復を目的とした機能的口腔ケアから成り立つと認識されている。また、口腔ケアは自分自身で行うセルフケアと歯科医師および歯科衛生士によるプロフェッショナルケアに大別される。
 自分自身で行えることとして(セルフケア)毎日の歯みがきはもちろん、栄養のバランスのとれた食事をとり、よくかみ、口腔をより動かすことで口腔機能を良好に保つことがあげられ、プロフェッショナルケアとしては、患者さんにあった口腔清掃のアドバイスや専門的な歯面清掃、口腔機能の回復などがあげられる。
 したがって、口腔ケアはセルフケアとプロフェッショナルケアの両面から行う必要がある。個人個人の口の中にあった、さらには全身の健康状態に対応した正しい口腔ケアをプロフェッショナルケアから学び、規則正しい生活習慣を実践することにより、歯や口腔の健康ひいては全身の健康に結びつけてみてはどうだろう。「からだの健康は歯と歯ぐきから」である。

糖尿病と歯周病(歯槽膿漏)

 糖尿病と歯周病は代表的な生活習慣病です。糖尿病は喫煙とならんで歯周病の2大危険因子であり、一方、歯周病は3大合併症といわれる糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害についで6番目の合併症といわれ、両者は密接な相互関係にあります。しかし、慢性炎症としての歯周病をコントロールすることで、糖尿病のコントロール状態が改善する可能性があるとされています。
 歯周病になる根本的な原因は歯垢(プラーク)です。正しいブラッシングで口の中を清潔に保っていれば歯周病になるリスクはかなり低くなりますが、体の病気が原因で歯周病になりやすくなったり、治りづらくなる可能性もあります。風邪をひいたり、疲労困憊(こんぱい)、ストレスがたまっていると抵抗力が落ち、口の中も歯周病菌に対する抵抗力が下がり歯周病になりやすい。また病気になっていなくても歳を重ねると身体の抵抗力が低下していくため、高齢者ほど歯周病になりやすく、歯周病を治すことが難しくなります。
 では、糖尿病と歯周病の関係はどうなっているのでしょう?
 糖尿病になると体の抵抗力が低下し、さまざまな合併症が起こり、「抵抗力が下がる→細菌に感染しやすい→歯周組織が歯周病菌に侵されやすい」と歯周病になりやすく、歯周病になると治りにくくなるのです。
 さらに糖尿病になると唾液の分泌量が減少し、唾液が少なくなることは、口の中の細菌を洗いながす作用が弱くなり、糖尿病による白血球機能低下(細菌を食べてしまう機能の低下)のため細菌数が増加し、歯周病になりやすく、治りづらくなってしまうのです。
 歯周病が全身に多くの影響を与えることは昨今の研究で明らかになってきています。
 誤嚥(ごえん)性肺炎の原因となる細菌の多くは歯周病菌であるといわれており、誤嚥性肺炎の予防には歯周病のコントロールが重要になります。閉経後の骨粗しょう症の患者さんにおいて、歯周病が進行しやすい原因として最も重要と考えられているのがエストロゲンの欠乏といわれています。エストロゲンの分泌減少で骨がもろくなると歯を支える骨ももろくなります。また歯周ポケット内で炎症を引き起こす物質が作られ歯周病の進行が加速するといわれています。また詳しいメカニズムは解明されていませんが、歯周病病巣から放出されるLSP(歯周病菌由来の毒素)やTNFαは脂肪組織や肝臓のインスリン抵抗性を増加させ、血糖値を上昇させます。重度歯周病患者では血中CRP値が上昇し、動脈硬化や心筋梗塞のリスク亢進と密接に関与すると考えられています。
 毎日の食生活を含めた生活習慣を見直し歯周病を予防することが全身の生活習慣病を予
防することにもつながります。

むし歯と糖

むし歯と糖

むし歯は歯の硬組織(エナメル質・象牙質)が局所的に破壊されていく疾患である。このような歯の硬組織の破壊が起こるのは、まず細菌が歯面に付着し、次いでこれらの細菌が食物中の炭水化物を分解・発酵させ、生じたさまざまの有機酸(主として乳酸)が硬組織を分解するためと考えられている。
 一般的に歯、食物(スクロース)、細菌(ミュータンスレンサ球菌)の3つの条件が重なり合ったところにむし歯(齲蝕)が発生すると言われている。
 「砂糖」という名のもとに私たちは毎日さまざまな形でスクロースを摂取している。日常生活で甘味を摂取せずに生きていくのは無理なので少しでもスクロースを減らす方法として次の代用糖がある。
 【ソルビトール】イチゴ類やサクランボ、リンゴ、梅などに含まれている糖アルコールの一種で甘味度はスクロースの約60% 。カロリー価はスクロースと同程度だ。ソルビトールをはじめ糖アルコールは大量に摂取すると下痢を起こすことがある。ソルビトールは吸湿性が強く、湿潤剤として歯磨きに10% 前後含まれている。そして、口腔内細菌によって発酵されにくく、ミュータンス菌のようなソルビトール分解能をもつ菌でも、ソルビトールを分解して酸を産生するには長時間を必要とする。ソルビトールは、糖尿病患者用の甘味料として使用されているばかりでなく、チューインガムやキャンデー類にも使用され、「むし歯の心配はいりません」といった類いの効能書きが付いているものも販売されている。
 【キシリトール】多くの野菜や果物に含まれており、スクロースと同程度の甘味を持ち、爽やかな感じを与える。ソルビトールと同様に大量に摂取すると下痢を起こす。キシリトールはスクロースに比べるとプラークを形成する能力が極めて低いという臨床実験がある。キシリトールは、次の2つに比べてむし歯の発生率が激減することが明らかになった。
 【サッカリン】スクロースの500倍の強い甘味を持つ。甘味の味の切れが悪く、特有の後味の悪さが残る。ダイエット用の非カロリー性甘味料として清涼飲料水やアイスクリームなどに好んで用いられている。
 そのほかむし歯を抑制する食べ物として天然食品がある。粗糖の方が精製糖に比べてむし歯を発生させる作用が弱いということが研究者の実験で確かめられている。まだ他にもむし歯になりにくい糖はある。食品を買うとき裏面に必ず糖の種類が明記してあるので参考にしてほしい。


メタボリックシンドロームと歯周病

 メタボリックシンドロームの診断基準は、ウエスト周りが男性は85センチ以上、女性は90センチ以上で、高脂血症、高血圧、糖尿病のどれか2つ以上があてはまることだ。高脂血症、高血圧、糖尿病、肥満の4つがそろうと生活習慣病で死亡する確率が健康な人に比べて35倍も高まり死の四重奏といわれている。さらに歯周病を加え5つになると生活習慣病で死亡する確率がますます高まり死の五重奏といわれている。
 もし残念なことにメタボリックシンドロームになってしまった場合はどうするべきか。まず、生活習慣の改善指導を受け、食事療法や運動療法により改善をする。しかしそれでも改善が認められないときは、薬物治療を導入することになる。
 食事療法で大切になる「かむ」ことは、歯周病と深く関わってきます。しっかりかんで食べることで次の効果がある。
①早食いを防止し満腹感が得られやすくなるため、食べすぎ、どか食いを防止する。
②よくかむことで、視床下部からホルモン(神経ヒスタミン)が分泌され食欲が抑制できる。
③よくかむことで、交感神経が刺激され代謝が活発になり、消費カロリーが増加する。
④ゆっくりよく味わうことになり、うす味、少量でも充分な満足感が得られる。
 しっかりかんで食べることが肥満の解消・予防になる。歯周病をコントロールし、よくかむことでメタボリックシンドロームが予防できる。バランスのよい食事をしっかりかんで肥満予防。メタボリックシンドロームの予防には、歯の健康を保ち、いつまでも自分の歯でかめるようにすることが重要だ。
 歯周病を予防するにはどうしたらよいだろうか。まず第1にタバコを吸う人は禁煙・節煙をすることだ。統計によるとヘビースモーカーの人は、吸わない人の5.88倍も歯周病にかかりやすい。ぜひ、禁煙に取り組んでみよう。第2に毎日の確実で規則正しいブラッシング(歯磨き)が必要だ。「確実で」ということが重要なので、ただ磨いているのではなく、磨けていることを意識してみよう。また、歯を磨くだけでなく、歯茎のマッサージも忘れないようにしてほしい。第3に定期健診を受けること。歯医者が好きな人は少ないだろう。しかし、これも基本になる大切なことで、自分ではとれない歯石とりなどのために定期的に健診を受けてほしい。第4に健康な食生活。生活のリズムを考慮した食生活となるよう、主食、主菜、副菜のそろった食事をとり、さらに歯ごたえのある食べ物をよくかんで食べると歯周病予防につながるだろう。
 健康は歯から口から笑顔から。

受動喫煙とその影響

 日々の診療の中で子どもの治療に付き添う保護者から、「うちの子どもは歯茎の色が墨のように黒いのですが何か病気でしょうか」とよく聞かれる。
私は患者さんにいくつか問診をする時に、「タバコは吸われますか。または家族で誰か吸われる方はいますか」と必ず聞く。
 昨今、タバコが健康に及ぼす害というのは多く報告されており喫煙者には肩身の狭い社会になっているが、実はタバコの煙には数千種類以上の化学物質が含まれており、タールやニコチン、一酸化炭素などの有害物質が含まれている。
特にタールは多くの発がん性物質を含み、こうした有害物質は喫煙者が吸い込む煙(主流煙)よりも、タバコの先から出ている煙(副流煙)に多く含まれており、非喫煙者でもこのタバコの煙を吸い込むこと、いわゆる受動喫煙によって健康への害が生じる。
 ある調査によると、非喫煙者の妻が1日20本以上の喫煙をする夫を持つ場合、非喫煙者の夫を持つ人に比べて肺がんで死亡する率が2倍も高いという結果が報告されている。
また2006年に公表された「米国公衆衛生総監報告」でも、受動喫煙による健康への影響について、次のような報告がされている。
①受動喫煙によって冠動脈心疾患のリスクが25% ~30% 増加する。
②喫煙者との同居に伴う受動喫煙が原因で、肺がんリスクが20% ~30% 増加する。
③受動喫煙と乳幼児突然死症候群の間には関係がある。
④親の喫煙による受動喫煙と、幼児および子どもにおける下気道疾患の間には関係がある
⑤親の喫煙と、中耳炎や慢性滲出性中耳炎などの小児の中耳疾患の間には関係がある。
 家庭や職場で副流煙にさらされている成人非喫煙者では、歯周病のリスクが57% も高くなり、一方、子どもの場合は喘息やアレルギー疾患の危険因子となることが知られている。
家族に喫煙者がいる家庭の子どもでは、喫煙者がいない子どもと比べ、4~6倍もの高率で歯肉の黒ずみがみられる。
また、受動喫煙による子どもの歯肉の黒ずみの出現頻度は、これまで受動喫煙が発症の一因とされていた喘息やアレルギー疾患よりも高率だった点も注目される。
このように、特に子どもでは受動喫煙によって歯肉の黒ずみが顕著に現れることが最近分かってきている。
喫煙者自身はもちろん、タバコを吸わない子どもたちの歯の健康を守るという意味からも、禁煙の意義は大きいだろう。

「歯磨き」と「守備範囲」

「歯磨き」と「守備範囲」
 みなさんはどんなスポーツが好きだろうか。今年は当県で「ぎふ清流国体・ぎふ清流大会」が開催され、県民のスポーツに対する意識も高まっていることだろう。
 私は学生時代にラグビーをしていたが、この競技は体格や足の速さなどでその人に適したポジション、いうなれば「適材適所」がある。多少体格が小さくてもその人に適したポジションで能力を充分に発揮すれば活躍でき、体格が小さい味方選手が、対戦相手の体格の大きい選手をタックルで倒そうものならチーム全体が盛り上がったものだ。また、野球などのスポーツでは時折「守備範囲」という言葉が使われる。有能な遊撃手は三塁手の後ろからセカンドベースをまたいだあたりまでカバーするが、ライトフライを捕ることはまずあり得ない。なぜならライトフライを捕るべき選手がほかにいるからだ。
 日常診療で患者さんに歯磨き指導をするときに、私はよくこの「守備範囲」という言葉を使う。どんなによくできた歯ブラシでもそれ1本だけでは口の中を隅々まできれいにすることはできない。なぜならピチリと閉まった障子のような歯と歯の接触点や、幅の広い奥歯の歯の間の下側のすき間など、歯ブラシの毛先では物理的に到達し得ない部分があるからだ。その部分を磨かず、毛先が当たる部分だけを磨いていては、表面の平らなところはきれいでも、歯と歯の間には汚れがぎっしり…といった口になり、「いつもしっかり磨いているつもりなのになぜなんだろう」と首をかしげる結果になるだろう。
 歯と歯の接触点にはデンタルフロス(糸ようじ)。歯の間の下のすき間には歯間ブラシ。これらの道具は単独では非力だが、歯ブラシでは届かない部分、すなわち歯ブラシにはない守備範囲を持った有能な選手であるのでぜひ活用してほしい。「デンタルフロスや歯間ブラシがないと中途半端で歯磨きが終わった気がしない」と思うようになればたいしたものだろう。
 また、これらに加え最近はさまざまな補助的清掃器具が販売されている。年齢や歯並びの違いによっては効果的な使い方があるので、使用方法やサイズなど遠慮せずに歯科医師や歯科衛生士に尋ねてほしい。
 介護が必要な方や寝たきりの方の口腔ケアをする場合にもこれらの器具は有効となる。歯ブラシ単独では届かない部位から「どさっ」とよごれが取れてくることも少なくない。口腔内に落とし、飲み込んでしまわないように注意してきれいに取り除くことが必要だ。

食生活と身体の退化

 少し前から無農薬野菜などが注目されるようになった。食生活が身体や心に多大な影響を与えていることは、最近ではよく知られている事実だ。
 1930年代に世界14カ国で伝統的な自給食の生活をしている人びとと、同じ民族で近代食生活へ移行した人びととの口腔内の状態や顎顔面の形態変化、身体変化について生態学的調査・研究が実施された。
 近代食生活へ移行した人びとからは、どの国やどの地域でも食生活の変化が口腔内だけでなく、顎顔面や身体全体に退化として著しい病的変化をもたらすだけでなく、精神的にも変化をきたしているという事実が判明した。それに対し、その土地の自然の恵みだけで自給食の生活をしている人びとの口腔内や身体的、精神的な素晴らしさは目を見張るばかりであった。
 現在の日本はどうだろう。ジャンクフードがあふれ日本古来の食生活は随分姿を変えてきている。今一度食べることや日本食の大切さを再認識する必要があるだろう。また、食事の仕方も大切で次の5つのことを守って食べることを推奨する。
①家族全員が食卓に着くまで食べるのを待ちましょう
②全員で手を合わせて「いただきます」をしましょう
③食事中はテレビを消しましょう
④ちゃんとすわって足を床につけて食べましょう
⑤くちゃくちゃ音を鳴らさず、口をちゃんと閉じて静かに食べましょう
 食生活は身体や心の成長に多大な影響を与えるため、当たり前のことがとても大切で今
一度きちんと見直す必要があるだろう。

咀嚼としつけ

―しつけで決まる子供の歯並び―
 日々の診療で▽子供の歯並びはどうすればよくなるか▽食べ物は歯並びに影響するか▽歯並びは矯正すればよいか▽歯並びは遺伝か▽片側かみの子は顔がゆがむか―など聞かれることが多い。また最近さまざまなところで歯並びが取り上げられ、歯並びが悪いのは軟らかいものばかり食べて硬いものを食べなくなったためともいわれている。果たして本当にそうなのだろうか。
 歯並びは遺伝や環境、咀嚼、食品、姿勢などさまざまな因子が絡み合っている。歯並びは予防できるかという疑問に興味深い報告がある。W.A.Price博士が世界各地の民族を調査したところ、同じ民族内部で突然に歯列不正が出現してきたり、同じ親から生まれた子供でも、ある時を境にそれ以降に生まれた兄弟はみな歯列不正が出現したと報告している。その境とは伝統的な文化や生活様式・食品を奪われた瞬間であろうと述べている。その地域に根差した伝統食から近代食になると、歯列不正はもちろん肉体面や精神面、道徳面まで退化していることを報告している。
 現在の日本はどうだろう。伝統文化である畳で生活することは少なくなり、食事は日本古来の米文化からパンなどの欧米化が進んできた。食事様式も畳に正座し、茶碗などの食器を口元に運ぶ日本古来の様式から、椅子に座り口を食器に近付ける欧米様式が多くなった。また20年前と比べると子供の体格は大きくなったが、筋力や運動能力の低下がみられ、歩行量も約半分となった。乳歯列は歯が平らになるくらい擦り減り、上の歯が下の歯を隠さず、歯と歯の間に隙間があるのが正常であるが、そのためには良い姿勢で咀嚼回数が多くなくてはいけない。良い姿勢は正しい動的な活動を続けていることで無意識にとりうるものである。腹筋や背筋のどちらかを多用するような偏った運動や、左右の傾きが極端に異なった運動はもちろん、睡眠時間が長かったり、だらだらした生活などで筋力が低下し骨格をゆがめてしまう恐れがある。そのため姿勢が悪いと咀嚼運動は劣化してしまう。
 子供は自覚することができないので、乳歯列をきちんと成長させるには両親や祖父母によって正しい文化、生活習慣を教えることが大切になってくる。しつけは自我が芽生える前に家庭によって行われ、それが行儀のよさにつながる。
今一度歯並びを考える前に、本当に守らなければいけないものは何かよく考えてみたいものである。

患者さんとの共同作業

 むし歯などで歯が痛い場合、当然歯科医院へ行って治療をしてもらうことと思いますが、初期に自覚症状がない歯周病は気付いたときには既に歯を残すことができなくなるケースもあります。歯科医師は患者さんがむし歯や歯周病などで痛くなって受診したとき、むし歯のできやすい傾向を診断した上で食生活などの改善を働きかけ、再発リスクを抑えようとします。歯科医師の説明不足も大きく関係していますが、患者さんの理解が得られないと治療や再発防止の改善がなかなか進みません。痛くなってから慌てて飛び込む歯科医院も一案ですが、自覚症状がない場合でも気軽にかかれる歯科医院を日ごろから決めておき、定期的な健診を受けることは極めて大切です。
 糖尿病や高血圧などのような慢性疾患は自己認識をしていることでしょうが、歯の場合は自覚症状が出てひどくなるまで放置するケースがあります。最近ではプラークコントロールという言葉が一般的に使われるようになり、歯の健康意識も高まってきましたが、自覚が出る前に歯科医院にかかるというケースはまだまだ浸透していないようです。
 むし歯は細菌や食べ物、歯の質、唾液の量と質などが大きく関わっていますので、その危険因子を減らさないとまたむし歯ができてしまいます。砂糖を絶えず口にする習慣がある人は、むし歯になりやすいという傾向がありますので、食習慣の見直しをする必要があります。
 静かに進行して歯を支える骨が減ってしまう歯周病は、歯石を取り除くなどの定期的な管理が大切です。「転ばぬ先の杖」ということわざがあるように、定期健診こそが極めて大切です。自らが歯科医師と共に歩むという気持ちを持つことが大切ではないでしょうか。

甘いものでむし歯予防?

一昔前は甘いものを食べるとむし歯の原因になるとよく言われたが、最近は歯ブラシ・歯磨き剤などと一緒にガムやチョコレートなどを販売している歯科医院も多い。こういったものは市販のガムやチョコレートよりやや高価だが、キシリトール配合でむし歯予防など歯によいと言われている。
むし歯の大きな原因の一つは「砂糖」である。砂糖は口の中のむし歯原因菌(ミュータンス菌)を増殖させ、歯垢(プラーク)が多くできるようにする。プラーク内のミュータンス菌は酸を産生し歯を脱灰させむし歯が進行していく。しかし1997年4月厚生省(現厚労省)に認可されたキシリトールは自然由来の甘味炭水化物(糖アルコール)で、プラーク内の酸の産生がなく歯が脱灰しない。糖アルコール類の全てがこの性質を持つが、キシリトールのみがこれに加えて唾液分泌促進作用とミュータンス菌の増殖を阻害しプラークの量と付着性を減少させ、歯の再石灰化を促進させる性質を持ち、むし歯を予防することができる甘味料である。キシリトールをはじめとした糖アルコールは胃や腸で消化吸収されにくいため、カロリーは砂糖よりも低く(キシリトールは砂糖の75% )、血糖値を急激に上昇させることもないためインスリン分泌も刺激しにくい性質を持っている。
最近はキシリトールも随分と普及し、各メーカーはプラスαの要素を取り入れていることが多い。また市販品と歯科医院専売品を区別している場合もある。歯科医院専売品は100% キシリトール使用だったり、CPP―ACP(牛乳由来で口の中で溶けやすいリン酸カルシウムと乳たんぱくからできた複合体)により再石灰化の機能の強化成分が2倍配合されていたり、POs―Ca(リン酸化オリゴ糖カルシウム溶解性の高く維持するイオン性のカルシウム)により再石灰化機能を強化している。それぞれの研究により初期むし歯に対応した機能を強化している。市販品の場合は予防に適さないものもあるが、歯科医院専売品の場合は、どれもpH5.5を下回るものはなく予防ではこちらをおすすめしたい。またチョコレートも歯科専売品があり、100% キシリトール配合や、カカオ36% 以上で味も良く緑茶カテキン配合のものがある。こういった商品は歯科医院ごとに取り扱いが違うので興味を持ったら一度聞いてみるとよい。
キシリトールは消化吸収されにくいため、一度に大量を摂取すると下痢の可能性があり注意が必要である。あくまでもむし歯予防の補助のものであり、日ごろの歯磨きが必要不可欠である。

歯周病と糖尿病

歯周病と糖尿病

 成人の約80% 以上の人が歯周病にかかっていることが、歯科疾患実態調査で分かっている。また「健康日本21」には、「歯周病は口の中のデンタルプラーク(歯垢)が最も大きな原因で発症するため、歯科を受診することや正しい歯磨きを続けることで予防できる生活習慣病としての性格を有している」と記載されている。

 歯ぐきの健康を長い間維持し歯周病の発症や再発を防ぐためには、患者自身によって炎症の原因であるデンタルプラークを歯ぐきから毎日取り除く必要がある。すなわち歯周病治療と歯周病の発症(再発も含め)の防止は、正しい歯磨きが非常に大事だといえる。日本での歯磨き習慣は定着しむし歯も減ってきているが、個人個人の口の中の状況に応じた歯磨きが十分になされているとはいえない。歯科医院で定期的に歯石の除去などの予防処置や歯磨きなどの指導を受けることが、歯を失わないために効果があることも分かっている。すなわち歯周病の予防には、歯磨きなどの患者自身による自己管理が非常に重要だが、自己管理のみで完全に歯石の付着を防ぐことは困難なため歯科医や歯科衛生士による指導管理と自己管理の両方をバランスよく行っていくことが重要だ。
糖尿病は歯周病を悪化させる因子の一つとして従来より考えてられてきた。一方、近年歯周病は糖尿病の「第6の合併症」として注目され、日本糖尿病学会は「糖尿病治療ガイド2008―2009」で、歯周病を「重大な合併症の一つ」としている。歯周病と糖尿病は密接な相互関係にあり、慢性炎症としての歯周病をコントロールすることで、糖尿病のコントロール状態が改善する可能性が示唆されている。
 糖尿病患者とそれ以外の人での歯磨きの状態や歯ぐきの状態を比較した多くの研究から、糖尿病患者は歯周病がより進行していることが分かってきた。また血糖値のコントロール不良な患者はコントロール良好の患者や糖尿病でない人と比べると、歯を支えている骨の吸収がより進行しているとの報告があり、血糖値コントロールが不良な患者ほど歯周病が進行しやすいことが示唆されている。歯周病も糖尿病も生活習慣病であり、歯周病は糖尿病の合併症である。また糖尿病は歯周病の重要なリスク因子だ。それぞれの病気の治療または予防をすることは当然大切なことだが、病気の治療をきっかけに食事、睡眠、喫煙など、生活習慣を改善することも健康な生活をする上で大切なことではないだろうか。

噛み合わせは大切

噛み合わせは大切

 最近、ラーメンやうどん、そば屋などで、すすることができない子どもたちを目にすることが多い。
 食事マナーの問題からか、昔のようにソバなどのすする音を立てて食べることが、若い人の間では少なくなってきた気がする。事実、子どもたちに音を立てずに食べるよう注意する保護者の姿もよく見かける。

 私も自分の子どもたちに尋ねてみた。すると「すすることが難しい」、次に「おなかに空気がたまり気持ち悪い」という返事だった。
うまくすすることができない原因として、次のことが挙げられる。
①口腔機能の低下により▽上手に噛む(咀嚼)▽飲み込む(嚥下)▽発音―ができない。
②児童では、顎の発育が悪く正常な顎口腔機能の発達が得られない。
③歯並びが影響する。
このようなことから、永久歯列が完成する時期まで咀嚼、嚥下、発音といった正しい「咀嚼運動」を学習することが大切だ。
噛むことは唾液の分泌や脳への血液を促し、歯並び(歯列)の正常な発達や顎の成長を促進する働きがある。
生涯にわたり自分の歯で噛むためにも正しい「噛み方」を身につけよう。

義歯性口内炎予防のための義歯清掃法と洗浄剤の選び方

高齢者の中には入れ歯を使用している人が多く、入れ歯が影響する口内炎も最近の診療で多く見受けられるようになった。この原因は大きく分けて①微生物因子による口内炎②機械的刺激による口内炎③アレルギーによる口内炎―に分けられる。
その中でもホームケアが重要な微生物因子による口内炎について説明する。微生物が口内炎を引き起こすメカニズムは、入れ歯表面に付着した微生物が粘膜の破壊を起こし、微生物に対する遅延過敏反応などによって病的反応を引き起こしていると考えられる。
治療法としては入れ歯に付着した汚れの除去が重要。機械的清掃にはブラシと超音波による清掃があるが、磨耗に対する配慮が必要だ。一般に歯ブラシは、毛が太い物は磨耗を引き起こしやすい。また毛が長く先が丸く径の小さいものは磨耗しにくい。歯磨き剤、家庭用洗剤、研磨用せっけんは入れ歯を傷つけるだけでなく、入れ歯の適合性を変化させることから使用すべきではない。また入れ歯をいろいろな方向にブラッシングする方がより効果的で、毎食後と就寝前に行うとよい。ただしブラシだけでの清掃ではプラーク除去は不完全だ。また超音波洗浄器としていくつか市販されているが、これのみでは十分ではないので化学的洗浄法を併用するようにする。
これは入れ歯洗浄剤を使用する方法で①アルカリ性過酸化物②次亜塩素酸塩③酸④酵素―の4種類の洗浄剤が主に市販されている。
アルカリ性過酸化物は最も一般的な浸漬型の洗浄剤で、使用が簡便で香りがよく入れ歯に有害な影響を与えない。義歯を1日6~8時間洗浄剤に浸しておくことは軽い汚れには効果的だ。主に新しい義歯を装着した人や毎日清掃する人に対して有効で、入れ歯の著しい汚れや付着した歯石の除去には効果がない。
次亜塩素酸塩は次亜塩素酸溶液が入れ歯に付着したプラークの除去に有効であることから、週に1回6~8時間義歯を浸漬する方法を用いる。大量の汚れや歯石の付着しやすい人に対して勧められる。
酸は着色性の汚れや歯石の除去に非常に効果があるが、金属を腐食させるという欠点がある。
酵素を用いた義歯洗浄剤は強固な付着物を除去するには効果があったと報告がある。酵素洗浄剤は、通常の使用では殺菌作用やカビを防ぐ作用があり、毒性がなく義歯材料に為害性(害を及ぼすこと)が小さい。それぞれの利点、欠点を理解して使い分ける必要がある。

やっぱり歯ブラシは大切!

やっぱり歯ブラシは大切!

日進月歩という言葉があります。日に日に進化する技術のことで、歯科治療分野でも例外ではありません。
う窩(むし歯の穴)に詰める材料も、口腔内の過酷な環境に長く耐え得るものに進化しています。かぶせ物はより天然色に近く耐摩耗性の優れたものに変化しています。不幸にして歯を失った場合に入れる義歯でも、一般的な樹脂製の物から、装着感を和らげる薄い金属のプレート状の物に変化しています。また磁石を利用し、しっかり顎に固定される物や、特殊な軟性樹脂で金属のバネが見えない物などがあります。取り外しの義歯が嫌な人には人工歯根を歯茎に植え込むインプラント治療などもあります。今後も治療のバリエーションや、その材質などの進化が見られることでしょう。こうなると、むし歯や歯周病で歯が悪くなっても安心だと思うかもしれませんが、これらの治療は全て修復であり、元に戻る再生治癒ではありません。
歯の再石灰化という言葉を聞いたことがあるでしょうか。肉眼でははっきり分からない程度の初期むし歯では再生が起こります。残念ながら、大きく開いたむし歯では再石灰化は起こりません。やはり自分の天然の歯に勝るものはないでしょう。また歯周病もごく初期であればほぼ元どおりの状態まで回復します。しかしかなり歯肉が下がってしまった重度の歯周炎では、歯と歯の間に隙間のない元
の状態に戻すのはかなり困難といえます。
そこでやはり大切なのは歯みがきです。むし歯や歯周病にならないためだけではなく、むし歯治療後の歯に維持や歯周病をさらに悪化させないためにも大事です。
むし歯や歯周病の原因はご存知のようにむし歯菌と歯周病菌です。これら病原細菌はほとんどの人の口の中に存在します。しかしむし歯の多い人と少ない人、歯周病の重度の人とそうでない人がいます。その理由の一つに病原細菌の数が挙げられます。ある種の歯周病菌は4~6時間ごとに繁殖することが知られ、食べ物カスを栄養源として多量に繁殖し、むし歯や歯周病を発症させるのです。プラーク(歯垢)はみがき残した食べカスではなく、増殖した病原菌の塊だとイメージしてください。完全に除去することは困難ですが、この病原菌の数を少ない状態に保つことはできます。そのための最も有効な方法が歯みがきです。むし歯や歯周病でお困りの人や予防を望んでいる人は、歯みがきをエチケット的な考え方から病原細菌を取り除くために、自身でできる最も重要な治療の一つと考
えてはどうでしょう。歯みがきに対する考え方も変わるのではないでしょうか。また歯間ブラシなどの補助器具や洗口液の併用で、自分に合った効率的な方法を、かかりつけ歯科医に相談して確認してください。

先天性欠如

先天性欠如

生まれつき歯が足らないことを歯の「先天性欠如」と言う。
日本小児歯科学会の最近の調査では、上下おやしらず合わせて永久歯が28本(親不知を除く)そろわない「先天性欠如」が、小児歯科を受診する子どもの1割に上ることが分かった。
この調査には7大学の小児歯科と協力歯科医が参加協力し、1980年代以降に12都道府県で7歳以上の受診患者1万5,544人のX線画像を分析した結果、1,568人(10.09% )に1本以上の永久歯
の欠如が認められた。
先天性欠如歯の割合は、左右5番目に生える奥歯(第2小臼歯)と2番目の前歯(側切歯)が多く、上あご(4.37% )より下あご(7.58% )の方が多かった。先天性欠如は病気ではなく歯の形成異常の1つで、乳歯にも見られる。
原因はよく分かっていないが、永久歯の先天性欠如が1~2本の場合は、進化の過程での退化現象とみられている。このほか遺伝的要因や内分泌疾患などの関与も考えられるが、明確な原因が分からないため予防することはできない。
治療法は次の通り。
①乳歯をそのまま使う。大事に使えば30歳ぐらいまで使えるといわれている。
②矯正治療をする。歯と歯の隙間を詰めて歯を並べる。
③入れ歯を入れる。
④ブリッジを入れる。ただしブリッジを入
れるには、土台にする健康な歯を削らなけれ
ばならない。
⑤インプラントを入れる。発育期には不可なため、大人になってから治療に取りかかる。
また治療ではないが、顎の大きさに比べて歯が大きく見た目に異常が感じられない場合や、4本生えるはずのところに3本分のスペースしかなく、かえってそれなりの歯並びとなることがある。両方ともまれなケースなのでそれを期待して放置することは避けるべきだ。
お子さんの歯が先天性欠如だと聞かされた場合、親は大変なショックを受けて大きな心配事となってしまう。また歯科医もいずれの治療法を選択すべきか、非常に難しいものとなっている。
お子さんの歯に異常を感じた場合は、早めにかかりつけ歯科医に相談してほしい。

スポーツマウスガードの奨め

皆さんは、日ごろどんなスポーツを楽しんでいるだろうか。スポーツ中に歯・口腔・顎関節などの外傷事故にあった経験はないだろうか。外傷によって顎顔面や口腔に後遺症をもたらすと、肉体的・精神的にもダメージを受け、社会生活にも支障を来すことになる。
特に頭頸部への衝撃で起こる脳震とうは、選手生命に影響を与えることにもなりかねない。学校歯科保健では、低年齢層での顎顔面や口腔への外傷が大きな問題となっている。
スポーツ外傷をいかに防ぐかが重要で、どんなスポーツも安全でこそ健康なスポーツといえる。そこでスポーツ歯科医学の立場から、顎顔面口腔の領域をスポーツ外傷から保護するために「マウスガード=口腔内保護装置」の着用を推奨している。
スポーツと歯科の関係は19世紀初頭のイギリス、ボクシング選手のマウスピース装着から始まった。その当時の選手はマウスピースを装着せずに競技を行っていたが、口腔外傷、脳・頸椎への障害などで、最悪の場合は死亡することもあった。そこで選手らは歯科医師にゴム製の口腔内装置を作製してもらうことにした。その後、アメリカを中心にマウスガードとしてボクシング以外のコンタクト
スポーツにも応用されるようになった。
マウスガードはマウスピース、マウスプロテクターとも呼ばれ、顎口腔外傷の予防・軽減を目的に、競技スポーツ時などに使用するものだ。上顎歯列を覆う形が一般的だが、場合によっては下顎だけ、上下顎に装着する物もある。
マウスガードの使用効果としては、①外傷や脳震とうの予防と軽減②運動能力の向上―に大きく分けられる。マウスガードを装着することで、外傷の発生頻度や重症度が低下することが多く報告されている。
外国では、マウスガードを装着していないと、装着しているときの1.6から1.9倍の確立で外傷を受ける可能性が高くなるとした報告もある。完全に歯が脱臼※1するような場合でも、装着することによって亜脱臼※2にとどめることも可能となる。
ただボクシングのような対戦相手の顔面を直接殴打するような格闘技にはマウスガードの装着が義
務付けられているが、装着により直接打撃に対し▽脳震とうを防ぐ▽脳震とうを起こしても重症化にならない―については、科学的根拠が明確にされていない。また装着によって運動能力が向上されることについても、同様に確立されてはいない。しかしコンタクトスポーツでは、マウスガードを装着することで安心してプレーができるようになり、本来持つ力が発揮できるようになると認識し、試合だけではなく練習中から装着することをお薦めしたい。
▽広報注※1=外力によって、歯を骨(歯槽骨)に固定している組織(歯根膜)が断裂すること。
▽広報注※2=一部歯根膜の付着が残存している状態のこと

フッ化物応用で丈夫な歯に!

フッ化物応用で丈夫な歯に!

生涯にわたって自分の健康な歯で生活を営むためには、小児期から高齢期までの適切なむし歯予防が必要だ。
歯の表面のエナメル質表層では、カルシウムが溶け出す「脱灰」と、再びカルシウムが戻る「再石灰化」が繰り返されている。エナメル質表面に歯垢が付着し、酸が産生され脱灰が優位になるとむし歯になる。エナメル質は大部分が無機質のリン酸カルシウムで、ハイドロキシアパタイトという結晶柱構造でできている。これは構造的に破壊されやすく酸にも弱く、ミュータンス菌などのむし歯菌が作り出す有機酸で、容易にカルシウムが溶け出す。
 むし歯予防には、①歯質=むし歯抵抗性の高い歯質を作る②歯垢の除去=歯の表面の環境を清潔で快適な状態に保つ③食事・間食(砂糖)への注意=規律ある食生活リズムの確立―の3つの要素があり、これらに対応することでむし歯リスクを抑えることができる。
そして安全でもっとも有効で高いむし歯予防効果が得られる方法として、「フッ化物」の応用が強く推奨されている。フッ化物は歯質と口腔環境(歯垢細菌)に作用して、①歯質の強化②再石灰化の促進③細菌活動の抑制―の役割を行い、むし歯予防効果を発揮する。
日本では、フッ化物を応用したむし歯予防法として▽フッ化物洗口▽フッ化物歯面塗布▽フッ化物配合歯みがき剤による局所的応用―などが実施されている。最も普及しているのが歯ブラシとフッ化物配合歯みがき剤による歯みがきだ。フッ化物配合歯みがき剤は歯みがき剤の市場占有率の約9割に達し、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化スズという種類のフッ化物を配合しており、むし歯の減少に大いに貢献している。しかしフッ化物配合歯みがき剤での歯みがきだけでは、歯みがき方法や時期、回数などで個人差が生じる。さらにむし歯多発
傾向者への有効な方法としては、「フッ化物洗口」と専門家が行う「フッ化物歯面塗布」を、永久歯が萌出する時期から積極的に併用することで、むし歯予防にさらなる高い効果が期待できる。
むし歯予防はもとより、むし歯によって歯を喪失しないためにもフッ化物応用の拡大が望まれる。

親知らずは抜かないといけないの

親知らずは抜かないといけないの
親知らずは歯列の一番奥に生える歯で、正式には第三大臼歯という。親知らず以外の歯は小・中学生のころまでに生えるが、親知らずは思春期以降に生えるため、親が気づかないという意味から親知らずといわれるようだ。以前は親知らずがちゃんと生えて機能していた人が多かったようだが、近年、食生活などの変化に伴い、人間の顎は小さくなり歯の本数は減少する傾向にあり、生まれつき親知らずが生えてこない人もいる。
「親知らずが生えてきたけど抜いた方がいいだろうか」と聞かれることがあるが、親知らずは必ず抜かなければいけないという訳ではない。歯列の中でまっすぐ生えていて、上下の親知らずが咬み合い機能していれば必ずしも抜く必要はない。抜く必要がある場合は▽生える位置や方向に異常がある▽生えるスペースが足りなくて一部しか生えていない▽横向きに歯肉や骨の中に埋まったままに
なっている―などの場合だ。
生える位置や方向に異常がある場合や一部しか生えていない場合は、前の第二大臼歯(12歳臼歯)との間に歯垢がたまりやすく、また歯みがきもしにくいため、親知らずも第二大臼歯もむし歯や局所的な歯周病が進行しやすくなる。このような場合は第二大臼歯を救済するために、抜歯した方がいいことがある。
一部しか生えず、一部あるいは大部分が歯肉におおわれている場合は、被覆歯肉が炎症を起こしやすく、痛くなったり腫れたりしやすくなる。自覚症状がなくても慢性的に炎症が進み、周囲の骨がとけ、気づいたときには第二大臼歯まで動揺してきたということもある。被覆歯肉を切除するだけで改善する場合もあるが、多くは抜歯の適応となる。
完全に骨の中に埋まっている場合は、本人も気づいていないことが多く、抜歯の必要となることは少ないが、まれに骨の中の神経をのうほう圧迫する症状や、骨の中に嚢胞を形成していることもあり、抜歯や手術が必要となることもある。また不幸にも第二大臼歯が喪失した後に、壮年期や高齢期になって、埋まっていた親知らずが生えてくることもある。
親知らずは必ず抜く必要はないが、気になる人はかかりつけ歯科医に相談してほしい。

なくて七癖

  「なくて七癖あって四十八癖」という言葉があります。癖がないと思っている人でも探せば7つはある。中には48もある人もいる。多かれ少なかれ人には癖があるという意味だそうです。皆さんにはどのような癖がありますか。
 「態癖」という言葉を聞いたことはありますか。態癖とは歯を移動させる、あるいは歯軸、歯列弓、下顎位を変えるなど、口腔や顎・顔面さらには全身に大きな影響を及ぼす日常の生活習慣の中で無意識に行うさまざまな習癖のことを意味します。例えば①指しゃぶり②頬杖③爪や舌・唇を咬む④唇を舐める⑤片咬みや奥咬み⑥歯ぎしりや食いしばり⑦開口⑧口呼吸⑨うつ伏せ寝や横向き寝などの睡眠態癖⑩猫背⑪体操座り⑫楽器の演奏―などがあてはまります。
 指しゃぶりや爪・口唇咬みでは歯に直接力を加えることになり、出っ歯やすきっ歯、開咬、受け口になったりします。うつ伏せ寝や横向き寝・腕枕など、歯列を押さえた形で寝ると歯並びが悪くなったり顎が左右にずれたりします。頬杖も同様に顎を左右にずらしたり、後ろに押し付けたりして、顎関節症ひいては肩こりや身体の不良を引き起こす可能性もあります。下顎が後ろにずれて咬み合わせが深くなかがいる過蓋咬合になると、首や後頭部の痛み(持続性頭痛)、肩こりを引き起こすこともあります。猫背になると身体が後ろに引け、逆に頭が前に出ようとします。5キロ前後の頭の重心
が前方へ移動するため、そのバランスを取ろうと下顎が後ろに引っ張られます。結果として出っ歯になったり口がぽかんと開いたりします。
低位舌(舌の先の位置が低く下顎前歯を裏側から前に押している状態)になると、舌たらずな喋り方になったり、下顎過成長を起こし下顎前突になったりします。また顎が下がり気道が狭くなるため、鼻呼吸ではなく口呼吸になってしまうこともあります。
態癖を止めるには、その影響を理解し自分の態癖を認め、生活習慣を改めなければなりません。
態癖を止めるためのコツは次の通りです。
①「絶対に止める」という意志を持つ
②「良い顔になる」という目標を持つ
③治す環境を作る(家族の協力、リマインダーの活用など)
目につきやすい場所にリマインダーシールを貼って、自ら態癖を止めるよう意識するのも一つの方法です。
いかがですか。きれいな歯と歯並びの笑顔になるように、態癖を探してみましょう。



歯並びはいつごろ治すのがいい?

歯並びはいつごろ治すのがいい?

幼稚園、小学校などで講演すると、必ず「歯並びはいつごろ治すのがいいでしょうか」という答えに一番困る質問が出ます。なぜならば一人一人の歯と顎の骨の状態によって答えが違ってくるからです。それでは答えは「専門医によく相談してください」となって、講演会も終わってしまうので、一般的に治した方がよい歯並びの内容を次のように説明します。
大きく歯並びを分類すると次の3つに分類されます。
①反対咬合=一般的に「受け口」といわれています。下の歯が前方に出すぎている状態です。
②上顎前突=一般的に「出っ歯」といわれています。上の歯が前方に出すぎている状態です。
③叢生=一般的に「乱杭歯」といわれています。歯の一本一本がそろわずに前後にずれたりねじれたりしています。
それではお子さんの口の中をじっくりと見てください。
①の反対咬合の場合、あなたの家族は黄色人種ですか。ほとんどの日本人が含まれると思いますが黄色人種の場合、全部が永久歯に生え変わるまで待つと矯正だけでは治りにくく下顎骨の手術が必要となる子どもの割合が多くなります。中顔面の骨の発育が少ない特徴のためです。そのため早く(5~7歳ごろ)治療するのがよいことが多いのです。3歳から治療できる装置もあります。でも反対咬合と一口に言っても特徴がいろいろあります。お子さんがいつ治療に入るべきかは専門医に相談するのがよいでしょう。
②の上顎前突の場合、上下の顎の骨の大きさと位置によって異なってきます。永久歯に全部生え変わってからでも治療できる人の割合が黄色人種の場合は多いのです。白色人種の場合は治りにくい人の割合が増えますので、早い時期に一度相談するのがよいと思います。
③の叢生の場合、6歳臼歯の噛み合わせが肝要となります。この歯が上下左右とも正しく噛んでいる場合は永久歯に生え変わるまで待ってもよい割合が多くなります。
実際の歯並びは①と③、②と③の両方の問題が重なっていることも多く、より複雑な診断が必要となる場合が多いです。いよいよ診断が決まり治療に入ったとしましょう。治療の期間は非常に長くなります。
早くても2~3年はかかります。長い場合は途中に経過観察する期間も含めて10年以上になる場合もあります。顎の発育を促したり歯を動かしたりする期間が終了しても、後戻りを防ぐために保定する期間も長いものになります。自分で判断して勝手に中止するとそれまでの努力が無駄になりますので、治療を始めたら最後まで続けることが大切です。