最新情報

お知らせ

食生活と身体の退化

 少し前から無農薬野菜などが注目されるようになった。食生活が身体や心に多大な影響を与えていることは、最近ではよく知られている事実だ。
 1930年代に世界14カ国で伝統的な自給食の生活をしている人びとと、同じ民族で近代食生活へ移行した人びととの口腔内の状態や顎顔面の形態変化、身体変化について生態学的調査・研究が実施された。
 近代食生活へ移行した人びとからは、どの国やどの地域でも食生活の変化が口腔内だけでなく、顎顔面や身体全体に退化として著しい病的変化をもたらすだけでなく、精神的にも変化をきたしているという事実が判明した。それに対し、その土地の自然の恵みだけで自給食の生活をしている人びとの口腔内や身体的、精神的な素晴らしさは目を見張るばかりであった。
 現在の日本はどうだろう。ジャンクフードがあふれ日本古来の食生活は随分姿を変えてきている。今一度食べることや日本食の大切さを再認識する必要があるだろう。また、食事の仕方も大切で次の5つのことを守って食べることを推奨する。
①家族全員が食卓に着くまで食べるのを待ちましょう
②全員で手を合わせて「いただきます」をしましょう
③食事中はテレビを消しましょう
④ちゃんとすわって足を床につけて食べましょう
⑤くちゃくちゃ音を鳴らさず、口をちゃんと閉じて静かに食べましょう
 食生活は身体や心の成長に多大な影響を与えるため、当たり前のことがとても大切で今
一度きちんと見直す必要があるだろう。

咀嚼としつけ

―しつけで決まる子供の歯並び―
 日々の診療で▽子供の歯並びはどうすればよくなるか▽食べ物は歯並びに影響するか▽歯並びは矯正すればよいか▽歯並びは遺伝か▽片側かみの子は顔がゆがむか―など聞かれることが多い。また最近さまざまなところで歯並びが取り上げられ、歯並びが悪いのは軟らかいものばかり食べて硬いものを食べなくなったためともいわれている。果たして本当にそうなのだろうか。
 歯並びは遺伝や環境、咀嚼、食品、姿勢などさまざまな因子が絡み合っている。歯並びは予防できるかという疑問に興味深い報告がある。W.A.Price博士が世界各地の民族を調査したところ、同じ民族内部で突然に歯列不正が出現してきたり、同じ親から生まれた子供でも、ある時を境にそれ以降に生まれた兄弟はみな歯列不正が出現したと報告している。その境とは伝統的な文化や生活様式・食品を奪われた瞬間であろうと述べている。その地域に根差した伝統食から近代食になると、歯列不正はもちろん肉体面や精神面、道徳面まで退化していることを報告している。
 現在の日本はどうだろう。伝統文化である畳で生活することは少なくなり、食事は日本古来の米文化からパンなどの欧米化が進んできた。食事様式も畳に正座し、茶碗などの食器を口元に運ぶ日本古来の様式から、椅子に座り口を食器に近付ける欧米様式が多くなった。また20年前と比べると子供の体格は大きくなったが、筋力や運動能力の低下がみられ、歩行量も約半分となった。乳歯列は歯が平らになるくらい擦り減り、上の歯が下の歯を隠さず、歯と歯の間に隙間があるのが正常であるが、そのためには良い姿勢で咀嚼回数が多くなくてはいけない。良い姿勢は正しい動的な活動を続けていることで無意識にとりうるものである。腹筋や背筋のどちらかを多用するような偏った運動や、左右の傾きが極端に異なった運動はもちろん、睡眠時間が長かったり、だらだらした生活などで筋力が低下し骨格をゆがめてしまう恐れがある。そのため姿勢が悪いと咀嚼運動は劣化してしまう。
 子供は自覚することができないので、乳歯列をきちんと成長させるには両親や祖父母によって正しい文化、生活習慣を教えることが大切になってくる。しつけは自我が芽生える前に家庭によって行われ、それが行儀のよさにつながる。
今一度歯並びを考える前に、本当に守らなければいけないものは何かよく考えてみたいものである。

患者さんとの共同作業

 むし歯などで歯が痛い場合、当然歯科医院へ行って治療をしてもらうことと思いますが、初期に自覚症状がない歯周病は気付いたときには既に歯を残すことができなくなるケースもあります。歯科医師は患者さんがむし歯や歯周病などで痛くなって受診したとき、むし歯のできやすい傾向を診断した上で食生活などの改善を働きかけ、再発リスクを抑えようとします。歯科医師の説明不足も大きく関係していますが、患者さんの理解が得られないと治療や再発防止の改善がなかなか進みません。痛くなってから慌てて飛び込む歯科医院も一案ですが、自覚症状がない場合でも気軽にかかれる歯科医院を日ごろから決めておき、定期的な健診を受けることは極めて大切です。
 糖尿病や高血圧などのような慢性疾患は自己認識をしていることでしょうが、歯の場合は自覚症状が出てひどくなるまで放置するケースがあります。最近ではプラークコントロールという言葉が一般的に使われるようになり、歯の健康意識も高まってきましたが、自覚が出る前に歯科医院にかかるというケースはまだまだ浸透していないようです。
 むし歯は細菌や食べ物、歯の質、唾液の量と質などが大きく関わっていますので、その危険因子を減らさないとまたむし歯ができてしまいます。砂糖を絶えず口にする習慣がある人は、むし歯になりやすいという傾向がありますので、食習慣の見直しをする必要があります。
 静かに進行して歯を支える骨が減ってしまう歯周病は、歯石を取り除くなどの定期的な管理が大切です。「転ばぬ先の杖」ということわざがあるように、定期健診こそが極めて大切です。自らが歯科医師と共に歩むという気持ちを持つことが大切ではないでしょうか。

甘いものでむし歯予防?

一昔前は甘いものを食べるとむし歯の原因になるとよく言われたが、最近は歯ブラシ・歯磨き剤などと一緒にガムやチョコレートなどを販売している歯科医院も多い。こういったものは市販のガムやチョコレートよりやや高価だが、キシリトール配合でむし歯予防など歯によいと言われている。
むし歯の大きな原因の一つは「砂糖」である。砂糖は口の中のむし歯原因菌(ミュータンス菌)を増殖させ、歯垢(プラーク)が多くできるようにする。プラーク内のミュータンス菌は酸を産生し歯を脱灰させむし歯が進行していく。しかし1997年4月厚生省(現厚労省)に認可されたキシリトールは自然由来の甘味炭水化物(糖アルコール)で、プラーク内の酸の産生がなく歯が脱灰しない。糖アルコール類の全てがこの性質を持つが、キシリトールのみがこれに加えて唾液分泌促進作用とミュータンス菌の増殖を阻害しプラークの量と付着性を減少させ、歯の再石灰化を促進させる性質を持ち、むし歯を予防することができる甘味料である。キシリトールをはじめとした糖アルコールは胃や腸で消化吸収されにくいため、カロリーは砂糖よりも低く(キシリトールは砂糖の75% )、血糖値を急激に上昇させることもないためインスリン分泌も刺激しにくい性質を持っている。
最近はキシリトールも随分と普及し、各メーカーはプラスαの要素を取り入れていることが多い。また市販品と歯科医院専売品を区別している場合もある。歯科医院専売品は100% キシリトール使用だったり、CPP―ACP(牛乳由来で口の中で溶けやすいリン酸カルシウムと乳たんぱくからできた複合体)により再石灰化の機能の強化成分が2倍配合されていたり、POs―Ca(リン酸化オリゴ糖カルシウム溶解性の高く維持するイオン性のカルシウム)により再石灰化機能を強化している。それぞれの研究により初期むし歯に対応した機能を強化している。市販品の場合は予防に適さないものもあるが、歯科医院専売品の場合は、どれもpH5.5を下回るものはなく予防ではこちらをおすすめしたい。またチョコレートも歯科専売品があり、100% キシリトール配合や、カカオ36% 以上で味も良く緑茶カテキン配合のものがある。こういった商品は歯科医院ごとに取り扱いが違うので興味を持ったら一度聞いてみるとよい。
キシリトールは消化吸収されにくいため、一度に大量を摂取すると下痢の可能性があり注意が必要である。あくまでもむし歯予防の補助のものであり、日ごろの歯磨きが必要不可欠である。

歯周病と糖尿病

歯周病と糖尿病

 成人の約80% 以上の人が歯周病にかかっていることが、歯科疾患実態調査で分かっている。また「健康日本21」には、「歯周病は口の中のデンタルプラーク(歯垢)が最も大きな原因で発症するため、歯科を受診することや正しい歯磨きを続けることで予防できる生活習慣病としての性格を有している」と記載されている。

 歯ぐきの健康を長い間維持し歯周病の発症や再発を防ぐためには、患者自身によって炎症の原因であるデンタルプラークを歯ぐきから毎日取り除く必要がある。すなわち歯周病治療と歯周病の発症(再発も含め)の防止は、正しい歯磨きが非常に大事だといえる。日本での歯磨き習慣は定着しむし歯も減ってきているが、個人個人の口の中の状況に応じた歯磨きが十分になされているとはいえない。歯科医院で定期的に歯石の除去などの予防処置や歯磨きなどの指導を受けることが、歯を失わないために効果があることも分かっている。すなわち歯周病の予防には、歯磨きなどの患者自身による自己管理が非常に重要だが、自己管理のみで完全に歯石の付着を防ぐことは困難なため歯科医や歯科衛生士による指導管理と自己管理の両方をバランスよく行っていくことが重要だ。
糖尿病は歯周病を悪化させる因子の一つとして従来より考えてられてきた。一方、近年歯周病は糖尿病の「第6の合併症」として注目され、日本糖尿病学会は「糖尿病治療ガイド2008―2009」で、歯周病を「重大な合併症の一つ」としている。歯周病と糖尿病は密接な相互関係にあり、慢性炎症としての歯周病をコントロールすることで、糖尿病のコントロール状態が改善する可能性が示唆されている。
 糖尿病患者とそれ以外の人での歯磨きの状態や歯ぐきの状態を比較した多くの研究から、糖尿病患者は歯周病がより進行していることが分かってきた。また血糖値のコントロール不良な患者はコントロール良好の患者や糖尿病でない人と比べると、歯を支えている骨の吸収がより進行しているとの報告があり、血糖値コントロールが不良な患者ほど歯周病が進行しやすいことが示唆されている。歯周病も糖尿病も生活習慣病であり、歯周病は糖尿病の合併症である。また糖尿病は歯周病の重要なリスク因子だ。それぞれの病気の治療または予防をすることは当然大切なことだが、病気の治療をきっかけに食事、睡眠、喫煙など、生活習慣を改善することも健康な生活をする上で大切なことではないだろうか。