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正しい口腔ケアを行っていますか?

 近年、歯周病が早産や低体重児出産に関わっていることが報告され、その後、心筋梗塞、糖尿病、誤嚥性肺炎などの全身疾患にも関係していることがわかってきている。さらに咀嚼機能と認知症との関連性、手術前後の口腔ケアによる術後合併症の関連性など、口腔環境が全身の健康と密接に関連していることも明らかになってきた。また「健康日本21」において「歯周病は口の中のデンタルプラーク(歯垢)が最も大きな原因で発症するため、歯科を受診することや正しい歯みがきを続けることで予防できる生活習慣病としての性格を有している」記載されている。そのため、歯と口腔のケアは、むし歯や歯周病予防のためだけでなく、全身の健康を守るためにとても大切である。
 現在、口腔ケアは、歯や口腔粘膜など口腔内の汚れを取り除く器質的口腔ケア(歯みがきや専門的な歯面清掃など)と口腔機能(咀嚼や発音など)の維持・回復を目的とした機能的口腔ケアから成り立つと認識されている。また、口腔ケアは自分自身で行うセルフケアと歯科医師および歯科衛生士によるプロフェッショナルケアに大別される。
 自分自身で行えることとして(セルフケア)毎日の歯みがきはもちろん、栄養のバランスのとれた食事をとり、よくかみ、口腔をより動かすことで口腔機能を良好に保つことがあげられ、プロフェッショナルケアとしては、患者さんにあった口腔清掃のアドバイスや専門的な歯面清掃、口腔機能の回復などがあげられる。
 したがって、口腔ケアはセルフケアとプロフェッショナルケアの両面から行う必要がある。個人個人の口の中にあった、さらには全身の健康状態に対応した正しい口腔ケアをプロフェッショナルケアから学び、規則正しい生活習慣を実践することにより、歯や口腔の健康ひいては全身の健康に結びつけてみてはどうだろう。「からだの健康は歯と歯ぐきから」である。

糖尿病と歯周病(歯槽膿漏)

 糖尿病と歯周病は代表的な生活習慣病です。糖尿病は喫煙とならんで歯周病の2大危険因子であり、一方、歯周病は3大合併症といわれる糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害についで6番目の合併症といわれ、両者は密接な相互関係にあります。しかし、慢性炎症としての歯周病をコントロールすることで、糖尿病のコントロール状態が改善する可能性があるとされています。
 歯周病になる根本的な原因は歯垢(プラーク)です。正しいブラッシングで口の中を清潔に保っていれば歯周病になるリスクはかなり低くなりますが、体の病気が原因で歯周病になりやすくなったり、治りづらくなる可能性もあります。風邪をひいたり、疲労困憊(こんぱい)、ストレスがたまっていると抵抗力が落ち、口の中も歯周病菌に対する抵抗力が下がり歯周病になりやすい。また病気になっていなくても歳を重ねると身体の抵抗力が低下していくため、高齢者ほど歯周病になりやすく、歯周病を治すことが難しくなります。
 では、糖尿病と歯周病の関係はどうなっているのでしょう?
 糖尿病になると体の抵抗力が低下し、さまざまな合併症が起こり、「抵抗力が下がる→細菌に感染しやすい→歯周組織が歯周病菌に侵されやすい」と歯周病になりやすく、歯周病になると治りにくくなるのです。
 さらに糖尿病になると唾液の分泌量が減少し、唾液が少なくなることは、口の中の細菌を洗いながす作用が弱くなり、糖尿病による白血球機能低下(細菌を食べてしまう機能の低下)のため細菌数が増加し、歯周病になりやすく、治りづらくなってしまうのです。
 歯周病が全身に多くの影響を与えることは昨今の研究で明らかになってきています。
 誤嚥(ごえん)性肺炎の原因となる細菌の多くは歯周病菌であるといわれており、誤嚥性肺炎の予防には歯周病のコントロールが重要になります。閉経後の骨粗しょう症の患者さんにおいて、歯周病が進行しやすい原因として最も重要と考えられているのがエストロゲンの欠乏といわれています。エストロゲンの分泌減少で骨がもろくなると歯を支える骨ももろくなります。また歯周ポケット内で炎症を引き起こす物質が作られ歯周病の進行が加速するといわれています。また詳しいメカニズムは解明されていませんが、歯周病病巣から放出されるLSP(歯周病菌由来の毒素)やTNFαは脂肪組織や肝臓のインスリン抵抗性を増加させ、血糖値を上昇させます。重度歯周病患者では血中CRP値が上昇し、動脈硬化や心筋梗塞のリスク亢進と密接に関与すると考えられています。
 毎日の食生活を含めた生活習慣を見直し歯周病を予防することが全身の生活習慣病を予
防することにもつながります。

むし歯と糖

むし歯と糖

むし歯は歯の硬組織(エナメル質・象牙質)が局所的に破壊されていく疾患である。このような歯の硬組織の破壊が起こるのは、まず細菌が歯面に付着し、次いでこれらの細菌が食物中の炭水化物を分解・発酵させ、生じたさまざまの有機酸(主として乳酸)が硬組織を分解するためと考えられている。
 一般的に歯、食物(スクロース)、細菌(ミュータンスレンサ球菌)の3つの条件が重なり合ったところにむし歯(齲蝕)が発生すると言われている。
 「砂糖」という名のもとに私たちは毎日さまざまな形でスクロースを摂取している。日常生活で甘味を摂取せずに生きていくのは無理なので少しでもスクロースを減らす方法として次の代用糖がある。
 【ソルビトール】イチゴ類やサクランボ、リンゴ、梅などに含まれている糖アルコールの一種で甘味度はスクロースの約60% 。カロリー価はスクロースと同程度だ。ソルビトールをはじめ糖アルコールは大量に摂取すると下痢を起こすことがある。ソルビトールは吸湿性が強く、湿潤剤として歯磨きに10% 前後含まれている。そして、口腔内細菌によって発酵されにくく、ミュータンス菌のようなソルビトール分解能をもつ菌でも、ソルビトールを分解して酸を産生するには長時間を必要とする。ソルビトールは、糖尿病患者用の甘味料として使用されているばかりでなく、チューインガムやキャンデー類にも使用され、「むし歯の心配はいりません」といった類いの効能書きが付いているものも販売されている。
 【キシリトール】多くの野菜や果物に含まれており、スクロースと同程度の甘味を持ち、爽やかな感じを与える。ソルビトールと同様に大量に摂取すると下痢を起こす。キシリトールはスクロースに比べるとプラークを形成する能力が極めて低いという臨床実験がある。キシリトールは、次の2つに比べてむし歯の発生率が激減することが明らかになった。
 【サッカリン】スクロースの500倍の強い甘味を持つ。甘味の味の切れが悪く、特有の後味の悪さが残る。ダイエット用の非カロリー性甘味料として清涼飲料水やアイスクリームなどに好んで用いられている。
 そのほかむし歯を抑制する食べ物として天然食品がある。粗糖の方が精製糖に比べてむし歯を発生させる作用が弱いということが研究者の実験で確かめられている。まだ他にもむし歯になりにくい糖はある。食品を買うとき裏面に必ず糖の種類が明記してあるので参考にしてほしい。


メタボリックシンドロームと歯周病

 メタボリックシンドロームの診断基準は、ウエスト周りが男性は85センチ以上、女性は90センチ以上で、高脂血症、高血圧、糖尿病のどれか2つ以上があてはまることだ。高脂血症、高血圧、糖尿病、肥満の4つがそろうと生活習慣病で死亡する確率が健康な人に比べて35倍も高まり死の四重奏といわれている。さらに歯周病を加え5つになると生活習慣病で死亡する確率がますます高まり死の五重奏といわれている。
 もし残念なことにメタボリックシンドロームになってしまった場合はどうするべきか。まず、生活習慣の改善指導を受け、食事療法や運動療法により改善をする。しかしそれでも改善が認められないときは、薬物治療を導入することになる。
 食事療法で大切になる「かむ」ことは、歯周病と深く関わってきます。しっかりかんで食べることで次の効果がある。
①早食いを防止し満腹感が得られやすくなるため、食べすぎ、どか食いを防止する。
②よくかむことで、視床下部からホルモン(神経ヒスタミン)が分泌され食欲が抑制できる。
③よくかむことで、交感神経が刺激され代謝が活発になり、消費カロリーが増加する。
④ゆっくりよく味わうことになり、うす味、少量でも充分な満足感が得られる。
 しっかりかんで食べることが肥満の解消・予防になる。歯周病をコントロールし、よくかむことでメタボリックシンドロームが予防できる。バランスのよい食事をしっかりかんで肥満予防。メタボリックシンドロームの予防には、歯の健康を保ち、いつまでも自分の歯でかめるようにすることが重要だ。
 歯周病を予防するにはどうしたらよいだろうか。まず第1にタバコを吸う人は禁煙・節煙をすることだ。統計によるとヘビースモーカーの人は、吸わない人の5.88倍も歯周病にかかりやすい。ぜひ、禁煙に取り組んでみよう。第2に毎日の確実で規則正しいブラッシング(歯磨き)が必要だ。「確実で」ということが重要なので、ただ磨いているのではなく、磨けていることを意識してみよう。また、歯を磨くだけでなく、歯茎のマッサージも忘れないようにしてほしい。第3に定期健診を受けること。歯医者が好きな人は少ないだろう。しかし、これも基本になる大切なことで、自分ではとれない歯石とりなどのために定期的に健診を受けてほしい。第4に健康な食生活。生活のリズムを考慮した食生活となるよう、主食、主菜、副菜のそろった食事をとり、さらに歯ごたえのある食べ物をよくかんで食べると歯周病予防につながるだろう。
 健康は歯から口から笑顔から。

受動喫煙とその影響

 日々の診療の中で子どもの治療に付き添う保護者から、「うちの子どもは歯茎の色が墨のように黒いのですが何か病気でしょうか」とよく聞かれる。
私は患者さんにいくつか問診をする時に、「タバコは吸われますか。または家族で誰か吸われる方はいますか」と必ず聞く。
 昨今、タバコが健康に及ぼす害というのは多く報告されており喫煙者には肩身の狭い社会になっているが、実はタバコの煙には数千種類以上の化学物質が含まれており、タールやニコチン、一酸化炭素などの有害物質が含まれている。
特にタールは多くの発がん性物質を含み、こうした有害物質は喫煙者が吸い込む煙(主流煙)よりも、タバコの先から出ている煙(副流煙)に多く含まれており、非喫煙者でもこのタバコの煙を吸い込むこと、いわゆる受動喫煙によって健康への害が生じる。
 ある調査によると、非喫煙者の妻が1日20本以上の喫煙をする夫を持つ場合、非喫煙者の夫を持つ人に比べて肺がんで死亡する率が2倍も高いという結果が報告されている。
また2006年に公表された「米国公衆衛生総監報告」でも、受動喫煙による健康への影響について、次のような報告がされている。
①受動喫煙によって冠動脈心疾患のリスクが25% ~30% 増加する。
②喫煙者との同居に伴う受動喫煙が原因で、肺がんリスクが20% ~30% 増加する。
③受動喫煙と乳幼児突然死症候群の間には関係がある。
④親の喫煙による受動喫煙と、幼児および子どもにおける下気道疾患の間には関係がある
⑤親の喫煙と、中耳炎や慢性滲出性中耳炎などの小児の中耳疾患の間には関係がある。
 家庭や職場で副流煙にさらされている成人非喫煙者では、歯周病のリスクが57% も高くなり、一方、子どもの場合は喘息やアレルギー疾患の危険因子となることが知られている。
家族に喫煙者がいる家庭の子どもでは、喫煙者がいない子どもと比べ、4~6倍もの高率で歯肉の黒ずみがみられる。
また、受動喫煙による子どもの歯肉の黒ずみの出現頻度は、これまで受動喫煙が発症の一因とされていた喘息やアレルギー疾患よりも高率だった点も注目される。
このように、特に子どもでは受動喫煙によって歯肉の黒ずみが顕著に現れることが最近分かってきている。
喫煙者自身はもちろん、タバコを吸わない子どもたちの歯の健康を守るという意味からも、禁煙の意義は大きいだろう。