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2018年3月の記事一覧

あなたの歯磨き方法正しいですか?

 先日、患者さんに「先生、毎日3回歯磨きしているのに、どうして歯周病になるのでしょうかねぇ?」と言われ、少々厳しい言い方ですが、「磨いているのと、磨けているのは違いますよ。正しい歯磨きの方法を習って帰ってくださいね」と答えました。
 歯科疾患実態調査によると、95%以上の人が毎日歯を磨く習慣があると答えています。一方で、40歳以上の80% 以上の人が歯周病にかかっているという結果もあります。つまり、歯磨きはしていても磨けていない患者さんがたくさんいることになります(歯周病の程度も人によって違うので、まったく磨けていないわけではないですが)。 「では、歯磨きではなく、他の方法(例えば、うがい薬や歯磨き粉など)で歯周病が治らないですか?」と聞かれることもあります。残念ながら、歯に付着する汚れ(歯垢、プラーク)はバイオフィルムと呼ばれ、細菌が何層にも重なってできているため、薬剤の効果はほとんど期待できません。歯科医師としても、何か画期的な薬やもっと簡便な方法があれば、介護の必要な方などは非常に助かるのに-と思うのですが、ブラシで物理的にバイオフィルムを壊すこと以上に良い方法がないのが現状です。
 治療室で歯科衛生士が歯磨き指導をしていると、「この年になって歯磨きを習うなんて恥ずかしいわ」、「この間も習ったのに磨けていないなんて情けない」という患者さんの声を聞くこともあります。ですが、人によって口の中の状況は歯並びも、歯周病の程度も違うので、その人に応じた歯磨き方法を習う機会はなかなかありませんし、すべての歯をしっかり磨くことは大変難しいことなのです。
 歯周病の治療の大前提に原因除去療法という考え方があります。簡単に言えば「病気の原因を取り除くことで歯周病を治す」という考え方です。歯周病は歯の表面についた汚れ(歯垢)が、歯茎に腫れ(炎症)を起こすことで始まります。したがって、歯磨きによって汚れを落とすことは、歯茎の炎症を抑える治療そのものとも言えるのです。
 歯周病は生活習慣病の一つとされています。自分自身に必要な歯磨きの方法をチェックし
て、それを継続することで口の健康だけでなく、全身の健康にもつながります。歯磨きをしているのに血が出たり、歯茎が腫れたりすると感じている方は、一度歯科を受診し、正しい歯磨きの方法を習うといいかもしれません。実際に「歯磨き方法を変えるだけで歯周病が改善した」と実感する患者さんも大勢います。