歯科コラム

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油断できない口の中の細菌

油断できない口の中の細菌

 私たちの口の中には、普段から3 0 0 ~7 0 0 種類以上、数千億~ 1 兆個もの細菌がすんでいます。これらは「口腔常在菌」と呼ばれ、健康なときにはバランスを保ちながら共存しています。歯みがきが不十分だったり、体調を崩したりすると、歯周病の原因となる菌が増えてしまい、炎症が進んでしまうことがあります。むし歯も、甘いものの取り過ぎやみがき残しが続くことで、進行しやすくなります。

 口の中の細菌は、歯の表面に「バイオフィルム」と呼ばれる膜のような汚れを作ります。これは、食べ物や飲み物に含まれる糖分などを餌にして細菌が集まり、歯にくっ付いてできるものです。台所のシンクにできるぬめりを思い浮かべると、イメージしやすいかもしれません。バイオフィルムは、毎日丁寧に歯をみがいても完全には落とし切れません。数カ月そのままにしておくと細菌が活発になり、むし歯や歯周病が悪化する原因になります。

 普段の歯みがきでは落とせないバイオフィルムは、歯科医院で専用の器具を使ってきれいに取り除くことができます。小さな子どもはまだ歯みがきがうまくできないことも多いため、歯科医院でのクリーニングの際にみがき残しの傾向を確認することが大切です。定期的なチェックはむし歯の早期発見にもつながります。

 中高生になると、生活リズムの乱れや間食の増加などでむし歯のリスクが高まります。部活や勉強で忙しい時期だからこそ、歯科でのケアが将来の歯の健康を守る支えになります。

 年齢を重ねると、歯周病が気になってくる人も多いでしょう。歯周病は痛みなどの症状が出にくく、気付いたときには進行していることもあります。最近では、口の中の細菌が糖尿病や心臓病、認知症などの病気とも関係していることが分かってきました。どの年代でも、ブラッシングや専門的なクリーニングによって細菌やバイオフィルムは減少しますが、しばらくするとまた増えてしまいます。自分の歯で食べて笑える毎日を続けるために、定期的な歯科ケアを習慣にしていきましょう。