歯科コラム
「口腔内擦過細胞診」という検査をご存じですか?
「口の中に白いもの、赤いものがある」「なかなか治らない口内炎が気になる」と聞いて、口腔がんを思い浮かべる人も増えてきています。背景には、口腔がんサバイバーとして発信を続ける著名人の影響や、実際に国内での口腔がんの罹患が増加傾向にあるという切実な状況があるのでしょう。
一般に、口腔がんの診断には組織を一部切り取る検査(生検)が必要となりますが、その前段階であるスクリーニングとして、重要な役割を担いつつあるのが擦過細胞診です。細胞診は産婦人科や皮膚科では広く普及している方法ですが、口腔領域でもその有用性が高く評価されています。専用のブラシを用いて粘膜を擦るだけで済むため、局所麻酔を必要とせず、出血もほとんど伴わない、患者さんの心身への負担が少ない「低侵襲性」の検査です。
検査結果は、問題のない「NILM」、細胞に異型のある「LSIL」「HSIL」、口腔がんの可能性が高い「SCC」に分類され、「LSIL」「HSIL」「SCC」であった場合は、速やかに病院口腔外科や口腔外科専門医による精査が必要となります。加えて、高齢者や免疫力が低下した人に多く見られる「口腔カンジダ症」など真菌(カビ)の有無も判別できます。がんの前触れなのか、真菌による感染なのか、目視では紛らわしい白い付着物を素早く特定できることもあります。この検査は、病院の口腔外科だけでなく、一部の歯科医院でも行えるようになってきており、さらに他の検査も合わせた口腔がん検診を行っている施設もあります。
口の中は、私たちが味わい、語らい、笑うための大切な場所です。口腔がんは進行すれば、これらのかけがえのない機能を大きく損なう恐れがありますが、早期に発見できれば決して怖い病気ではありません。産婦人科の検診が多くの女性の命を救ってきたように、口腔擦過細胞診もまた、健康の門番としての役割を強めています。「たかが口内炎」と放置せず、自らの健康を照らし出してみてはいかがでしょうか。